スノーボードがある程度滑れるようになってくると、ますます滑るのが楽しくなってきて、いろいろな技やジャンルに挑戦したくなってきますよね。
スノーボードには、パークスタイル、カービングスタイル、グラトリスタイル、バックカントリースタイルなど様々なスタイルがあり、どれもスノーボードの楽しさを倍増させてくれます。
その中でも今回は、「グラトリ」について詳しく見ていきたいと思います。ターンしている途中でさりげなく「さらっと」グラトリのひと技をいれるだけで、かなりスタイリッシュにかっこよく決まりますよ。
本記事では、スノボ初心者でも挑戦しやすいグラトリの技や、グラトリを練習する際に意識しておくといいこと、安全にグラトリを楽しむために注意すべきことを、現役のインストラクターである私たちが解説していきます。
グラトリと聞くと、初心者の方にはハードルが高く感じるかもしれませんが、ポイントを押さえればそれほど難しくありません。ぜひチャレンジしていきましょう。
グラトリって何?
スノーボードをしていると、グラトリというワードを耳にする機会があるかと思いますが、スノーボードを始めたばかりの初心者の方だと、グラトリが何かよくわからない方もいらっしゃると思います。
グラトリとは、「グラウンドトリック」の略で、比較的なだらかなコースでスノーボードの板を回したり、跳んだり、片方だけを浮かせたりするトリックを行うことを指します。
グラトリは一つの技だけでも楽しめますが、複数の技を組み合わせる「コンボ」を行うことで楽しみ方が無限大になります。一連の流れでコンボを行うと、華やかさが増しますし、ゲレンデの注目の的になります。
グラトリを練習することでトリック単体のスキルが上がることはもちろんですが、板の扱い方や重心移動がうまくなってきますので、スノーボードスキルを全体的に底上げしてくれるというメリットもあります。
僕がスノーボードにハマった最初のきっかけはグラトリでした!グラトリでかっこよく板を回したくてスキー場に通いつめ、たくさん練習したのが懐かしいです。1つの技ができたときの感激はひとしおですので、スノーボードがますます楽しくなっていくはずです。
女性や子供、中高年でもグラトリすることはできる?
ゲレンデでグラトリを楽しんでいる人を見ていると、若い男性が多いように感じます。そのため、グラトリにはかなりの筋力が必要だと感じて「自分には無理かも」と思ってしまっている人もいるでしょう。
筋力に自信のない女性や子供、中高年の方でもグラトリはできるのでしょうか?
大丈夫です!できます!
グラトリは筋力だけでなく、スノーボードの反発を利用して飛び上がっているので、筋力に自信のない方でも挑戦できます。もちろん、筋力がまったくないとグラトリをするのは難しいですが、ある程度の筋力があれば板のコントロールをうまく行えばかなり難易度の高い技にも挑戦することができます。
技にもよりますが、540°や360°は女性でも比較的簡単に回すことができます。筋力に自信がない方でもグラトリを楽しむことができますよ。
筋力がそれほどなくてもコツさえつかめればグラトリできます!が、体力はけっこう必要です。僕たちインストラクターでもグラトリを練習すると一気にどっと疲れます(笑)グラトリを練習するなら午前中の体力が残っているときにやるのがおすすめです。
グラトリはスノーボード初心者にはハードルが高い?
スノーボードを始めたばかりの初心者の中には「自分にはまだグラトリをするのは早いのではないか」とグラトリのハードルを高く感じてしまっている方もいるかもしれません。
結論から言うと、初級者コースを転ぶことなくスムーズにターンして滑り降りてこられるレベルであれば、グラトリに挑戦するレベルに達していると言えます。まったくのスノーボード初心者の方には難しいですが、数回スノーボードをしてある程度ターンして滑れればグラトリは可能です。
ただ、他のジャンルにも言えますが、いきなり難易度の高い技をしようとしても無理がありますので、最初は簡単なトリックから練習して、少しずつレベルアップしていくことが大切です。初心者の方がグラトリに挑戦しやすいステップについては次の章でご説明していきます。
真面目な方ほど「もっと上級者にならなければグラトリはできない。」と決めつけてしまいがちですが、決してそんなことはありません。
むしろ、グラトリを練習することによって板さばきを覚えることができるので、グラトリきっかけで上級レベルにまでスキルを上げることもできます。変な思い込みで自分で自分の可能性を奪わないようにしましょう☆
グラトリ初心者はこの技から練習していこう!
グラトリは、スムーズにターンができるようになっていれば、誰にでも挑戦することができるということはすでにお伝えしましたね。
ですが、ゲレンデでグラトリをしている人の様子を見ていると、かなり複雑に見えて何からどう練習していいかわからず戸惑ってしまうと思います。
そこでこの章では、グラトリ初心者でも気軽にチャレンジできるグラトリの基本をいくつかお伝えしていきます。人によってやりやすい、やりにくいが違ってくると思いますので、必ずしも順番通りにやらなくても大丈夫ですよ。興味のあるもの、できそうなものからチャレンジしてみましょう。
プレス
プレスとは、名前の通り板を踏みつけるトリックのことで、グラトリの基本的な動作になります。
板の真ん中センター部分を踏みつけてプレスしても何も変化はありませんが、ノーズやテール部分をプレスすると、滑りに変化をつけることができます。ノーズ、もしくはテールに重心を移動して、板の先端を浮かせるトリックです。
プレスはあらゆるグラトリの基本部分になる動作なので、ぜひ最初に練習してもらいたい項目です。まずは平地の停止した状態で練習して、慣れてきたら滑りながら実践しましょう。
オーリー
プレス同様にグラトリの基本となるのがオーリーです。オーリーはスノーボードの板のしなりを使ってジャンプすることです。
ちなみに、板のしなりを使う方法には次にご紹介するノーリーというトリックもありますが、違いとしては、後ろ足で弾くのか前足で弾くのかの違いです。後ろ足で弾けばオーリー、前足で弾けばノーリーになります。
オーリーはまずは平らなところで滑らない状態でやってみましょう。膝を曲げて後ろ足に重心を持っていき、板をしならせた瞬間、後ろ足で板を弾くように踏み切ります。板を踏み切ったら両肘で身体を上に引き上げて膝を胸に引きつけます。着地の際は両足でしっかり着地します。
止まった状態でオーリーができるようになったら、ゆっくりのスピードで滑りながら練習してみましょう。
オーリーがある程度できるようになれば、グラトリはもちろん、雪玉を飛び越えたり、高いところに飛び乗ったり、キッカーで高く飛んだりなど、スノーボードのバリエーションが増えてものすごく楽しくなると思います。
ノーリー
ノーリーはオーリーの反対で、前足で板を弾いて飛び上がるトリックです。
個人的にはオーリーよりもノーリーのほうがやりやすいですし、高く飛びやすいなと思います。いろんなトリックの応用にも使いやすいのでぜひともマスターしてもらいたいトリックの一つです。
オーリーの練習と同様、まずはスピードを出さない止まった状態で練習し、慣れてきたらゆっくりのスピードで滑りながら試してみるといいでしょう。
ノーリー単体だとあまり映えないトリックに見えるかもしれませんが、回転系のグラトリをするうえで、ノーリーはかなり役に立つので、早めにマスターしておくといいでしょう。ノーリーをマスターできればグラトリの幅を一気に増やすことができますよ。
フロントサイド180
グラトリの基本的な動きができてきたら、いよいよ板を回してみましょう。スピン系のグラトリです。まずは板を180°回すところから始めていきます。
ちなみに、スピン系にはフロントサイドとバックサイドの2種類があり、進行方向に対して背中を向ける回し方がバックサイド、背中を向けずに回すのがフロントサイドです。どちらがやりやすいかは人によって変わってきますが、最初は恐怖心が生まれにくいフロントサイドから練習するのがおすすめです。
まずは止まった状態から両足で踏み切るジャンプで、180°回してみましょう。少し体を低くし、上半身を使ってタメを作り、ジャンプと同時に両足で踏み切って半回転飛んでみます。半回転は慣れてこればそんなに難しくないと思います。
止まった状態で板を回転させることができるようになったら、ゆるやかな斜面でゆっくり滑りながらやってみましょう。
両足ジャンプで回せるようになってきたら、ノーリーやオーリーで回す練習をしてみましょう。
バックサイド180
続いては、回るときに一瞬背中を向けるバックサイドの180に挑戦してみましょう。バックサイド側の180はターンの延長で回してみるのが簡単でおすすめです。
トゥー側にターンをし始めたらそのまま進行方向に背中を向ける方向に180°回してみましょう。一瞬、進行方向が見えなくなるので怖く感じるかもしれませんが、目線を先に送ればすぐに進行方向を向くことができます。
スイッチフロントサイド180
フロントサイドもバックサイドも180°回すとスイッチ着地になりますので、スイッチで滑った後からの180°スピンも練習していくといいですね。
180°スピンを2回に分けて繰り返せば360°回って元のいつものスタンスに戻りますので、簡単なコンボの完成です。
1つでもコンボができるようになってくると自信にもつながりますので、まずは180スピンからのスイッチ180スピンを練習していくのがおすすめです。
グラトリをおしゃれにマスターするために意識すべきこと
グラトリにハマってくると「とにかくたくさん板を回さなければ…!」と思いますよね。
また、グラトリを始めたばかりだと「板を回すためにとにかく頑張って高く飛ばないと…!」などと思いがちです。
しかし、本当のグラトリ上級者たちは、いかにもラクそうに、かつ簡単そうに板を回します。グラトリは、頑張ってやるよりもラクそうにやるほうがおしゃれでかっこいいんです。
この章では、グラトリをおしゃれに決めるために意識したほうがいいことをまとめていきます。
回すことより飛ぶことに意識を向ける
グラトリといえば「板をたくさん回すこと」と思っている方も多いかもしれません。もちろん、540°回転や720°回転などをグラトリで回すことができればかっこいいですし、注目の的になれるでしょう。
ただ、必死でがんばって回す540°回転よりも、余裕を見せながら「さらっと」やる360°回転のほうがかっこよく見えるのも事実です。余裕がある分、板を回すことだけでなく、個人個人のスタイルを出していくことができるので、その人ならではのかっこよさを出すことができるのです。
グラトリのトリックに余裕を出すためには、板を回すスキル以上に高く飛ぶスキルを磨くことが大切になってきます。そのため、オーリーの技術を磨いたり、板を回すタイミングに重点を置いて練習したりすることがポイントになります。
筋力ではなく板の反発を利用する
グラトリは筋力があればうまくできると思われがちですが、決してそんなことはありません。もちろん、筋力があればある程度まではうまくできますし、マスターするスピードも速いですが、筋力だけに頼っていると、540°回転や、まして720°回転はなかなか難しくなってしまいます。
グラトリのマスターのコツは、筋力よりも板の反発の使い方です。
その点、一見グラトリの上達が難しそうに見える女性の方が、筋力が男性に比べて少ない分、板の反発をうまく使うことに意識を向けやすいため、グラトリの上達も早いかもしれませんね。
目線と上半身で先行動作を行う
グラトリで重要になるのは板の反発の使い方ですが、それと同じくらいに大切になるのが先行動作です。
先行動作は簡単に言えば、板を誘導するための補助的な動きのことです。
グラトリをはじめ、スノーボードの先行動作は目線と上半身の動きで行います。詳しくは動画や文章だけでは伝えきれないので、レッスンの際にお伝えしたいと思いますが、目線と上半身の動きを適切に加えていけば、グラトリは想像以上に簡単に決めることができますよ。
スイッチをうまく滑れるようになっておく
グラトリをすると、回す角度によっては着地が反対側のスイッチになることがあります。また、スイッチで滑っている状態からトリックを仕掛けることも多々あります。
そのため、スイッチでもスムーズに滑れるようになっておくと、グラトリがよりかっこよく決まる上に、グラトリでできる技の種類も一気に広まります。おしゃれにグラトリを決めたいならスイッチで滑ることも意識して練習するのがおすすめです。
スイッチで滑ることに慣れてこれば、着地も成功しやすくなりますし、カービングしながらトリックをするラントリにも挑戦しやすくなりますよ。
グラトリを練習するときに気を付けたいこと
グラトリはスノーボードの魅力を、よりたくさん実感できるジャンルですが、安全に楽しく練習するためにいくつか注意点があります。
これらの注意点をしっかりと把握しておかないと、転んだときに痛い思いをしてしまったり、周りからマナーのない残念なスノーボーダーとして見られてしまったりしてしまうかもしれませんよ。
周りに気を配る
グラトリに限ったことではありませんが、スノーボードを滑るときには必ず周りの状況に気を配ることが必須です。これができていないと、ゲレンデマナーを守れていないスノーボーダーとして残念に思われてしまいますし、事故の原因になってしまいます。
特にグラトリに関しては、通常のターンとは違った動きになりますし、スピードを突然緩めて板を回すという動きをしますので、後ろを滑っている他の人からしてみれば、「運転しているときに目の前の車が突然急ブレーキをかけてきた」ようなシチュエーションになるのです。
そういうグラトリの練習方法をするスノーボーダーが多くなってしまうと、「スノーボーダー=マナーの悪い人たち」となってしまうリスクもありますので、練習する際には必ず周りに人がいないかどうか、コースをふさぐことにならないかどうか、しっかりと確認してから練習するようにするのがベストです。
せっかくかっこいいグラトリの技を決めたのに、マナーを守れていないせいで「ダサい」と思われてしまったらもったいないですよね。マナーを守ってこそのかっこいいグラトリボーダーなのです!
逆エッジは覚悟する
グラトリは主に緩斜面で練習しますし、それほどスピードを出して行うトリックではありませんが、板を回すことが多いという特徴から、思わぬ側のエッジでひっかけてしまう「逆エッジ」が多発するジャンルです(笑)
最近は、急斜面かつハイスピードでカービングをしながらトリックを繰り出す「ラントリ
」も流行っていますが、失敗した時に盛大に逆エッジを食らってしまうことには変わりありません。
グラトリを練習するのであれば、逆エッジはある程度覚悟しなければいけないと言えるでしょう。むしろ、逆エッジを食わらずにグラトリがうまくなった人を見たことがない、というくらい、みんな食らっています(笑)
そのため、逆エッジになっても大丈夫なように、練習開始前に入念にストレッチをしたり、お尻パッドを付けたり、ヘルメットを着用したり、湿布を大量に持参したり、準備をしておくことをおすすめします。
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雪が柔らかい日に練習する
「どんな雪質でもトリックを決めるのがグラトラーだ!」という意見もあると思いますが、私個人としては、「グラトリは雪質の良い日に練習する」というのがおすすめの方法です。
ある程度マスターできているトリックを雪質の悪い日に行うのはありですが、まだマスターできていない練習段階にあるトリックをカチカチのアイスバーンでやるなんて(私から言わせると)自殺行為です。マスターしきれていないトリックは失敗確率が当然高いですし、ひどい転び方をする可能性もあります。
そのため、できるだけ雪がやわらかい日を選んで練習するのがおすすめです。
ふかふかパウダーが降った日は、恐怖心なく練習できるグラトリに最適な日です!春先も、雪が適度にシャバってくるのでグラトリの練習にもってこいなバーンですので、来シーズンに向けて新しい技を仕込むのもいいですね。
グラトリがなかなか上達しない…という方はやり方を変えてみよう
自分なりに頑張ってグラトリを練習しているのに、なかなかイメージ通りにできない、やりたい技がいつまでたってもできない!という方は少しやり方を変えてみるといいかもしれません。
グラトリに適した板に代えてみるのもあり
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グラトリをしたい!と思って練習している方は多いと思いますが、板はグラトリに適した板を使っていますか?
もしあなたが、身長に対して長く、硬く、そして重めの板を使っているのであれば、頑張って練習を重ねてもなかなかグラトリを思い通りにマスターするのは難しいでしょう。
グラトリに適している板は、ある程度やわらかく、反発のある板です。そして、身長に対して適正もしくは少し短めの板のほうが回しやすいです。また、グラトリをする際は、スイッチで滑ることも増えるため、ツインチップの形状の板がおすすめです。
カービング用の板でグラトリをしてみたことがありますが、重いし長いし硬いのでグラトリをやるにはかなりきつかったです。グラトリがなかなかうまくいかない方は板を適切な板に代えるだけでもかなりやりやすくなると思います。
グラトリレッスンを受けるのもおすすめ
「板はグラトリに適した板を使っているのに、なかなか思うようにトリックが決められない」という方は、練習方法で遠回りしてしまっているかもしれません。
ネット動画で流れているものを参考にしながら練習することも可能ですが、やはりコツのニュアンスは間接的には理解するのが難しくなってしまいます。
また、実際に自分がトリックをしているところをプロのインストラクターに見てもらって個別にアドバイスをもらったほうが上達は明らかに早くなります。グラトリを得意としているインストラクターに直接教えてもらうのは、効率的にマスターするうえでおすすめの方法です。
スクールによってはグラトリレッスンを受け付けてくれないところもありますので、事前にグラトリを教えてもらえるクラスがあるかどうかを確認するのが安心です。
まとめ
今回はグラトリについて、マスターしやすい練習のステップや練習する際のポイント、注意項目などご説明してきましたが、いかがでしたでしょうか。
個人的に、グラトリは大好きな分野の一つなので少々解説が熱くなってしまったかもしれませんが、一番言いたいことは「スノーボードが好きな人なら誰でも自由に挑戦することができるジャンルである」ということです。
「初心者だから」「女性で筋力がないから」「中年だから」というのは、挑戦しない理由にはなりません。もし、少しでもグラトリをしてみたい、興味があってチャレンジしたい、と思っているのであれば、ぜひとも挑戦してもらいたいと思っています。
ただ、一人でグラトリに挑戦するのはなかなかハードルが高いかもしれませんし、失敗した時のリスクも怖く感じてしまいますよね。グラトリをしてみたいけれど安全面も重視したい、という方はレッスンを受けてみるのがおすすめです。
私たちもグラトリレッスンを実施していますので、ご興味がある方や、質問だけでもしてみたいという方は、ぜひお気軽にご相談してみてくださいね。
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