「スノーボードのスタンス幅とアングルってどうセッティングすればいいの?」と悩んでいる方も多いのではないでしょうか。
どうセッティングすればいいのかわからない方は、ショップで買った時につけてもらってそのままになっていることも多いでしょう。スノーボードに詳しい経験者の店員さんが付けてくれていれば、それほど心配することはないのですが、中にはスノーボード未経験の店員さんが付けることもあり、とんでもないスタンス幅とアングルでつけられている場合もあるので注意が必要です。
また、インターネットで板とビンディングを買うと自分でセッティングしなければいけないので、どう付けたらいいか変わらず困ってしまうと思います。
実際、インストラクターとして皆さんに教えているときも、スタンス幅とアングルの質問はよくある質問の一つです。
そこで今回は、スノーボードのスタンス幅とアングルの決め方のポイントや、やりたいスタイル別のおすすめスタンス&アングル、そしてその他にもあるビンディングの調整方法について、私たち現役のスノーボードインストラクターが詳しく解説していきたいと思います。
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スタンス&アングルはスノーボード特有のもの
世の中には、横乗りのスポーツとしてスノーボードの他にスケートボードとサーフィンがありますが、スノーボードが他の二つと決定的に違うところ。それは、ビンディングという足を固定する装置が付いている点です。
スケートボードやサーフィンはビンディングが付いていないので、その場その場の状況で自分の感覚で足のスタンスやアングルを変えていきますが、スノーボードは他の2つと違って、足のスタンス幅とアングルが前もって決められています。
足がビンディングによって固定されている分、慣れてこれば板のコントロールがとても楽ですが、自分に合っていないスタンスやアングルで滑ってしまうと、上達を阻害してしまったり、膝や足首を痛めてしまったりする要因になりかねません。
そのため、スノーボードを安全に楽しく上達させるためには、自分に合ったスタンスとアングルを見極めていくことがとても大切なのです。
スノーボードのスタンス幅とアングルに正解はない
先ほど、スノーボードを上達させるためには自分に合ったスタンスやアングルでセッティングすることが重要とお伝えしましたが、スタンスとアングルに正解はない、というのが大前提です。
身長によっても、骨格によっても、やりたいスタイルによっても、最適なスタンスとアングルは変わってきます。
「このアングルが良い!」と思っていても、少し変えてみたほうがより滑りやすくなることもしょっちゅうあります。実際、私たちインストラクターもスタンスとアングルを試験的に調整して変えるということをしています。
ただ、ある程度は決め方の基準やポイントがありますので、基準に沿って調整してみて、自分なりにちょこちょこ変えて、その時の自分に最適なスタンスとアングルを見つけてみるのが「自分にとっての正解」と言えるでしょう。
スノーボードのスタンス幅の決め方
まずは、スタンス幅の決め方の基本についてみていきましょう。そもそもスタンス幅って何?という方もいらっしゃるかもしれません。スタンス幅とは、両足のビンディングとビンディングの間の長さのことです。
スタンスを調整することによって、膝の曲げやすさや安定感、操作性が変わってきますので、自分に合った乗り心地になるようなスタンス幅を見つけていきましょう。
スタンス幅の基準
自分好みの乗り心地になるようなスタンスを見つけるためには、まず、スタンス幅の基準を知ることが大切です。
一般的に「スタンスは自分の肩幅を基準にする」と言われていますが、自分の肩幅の長さを把握している人はそうそういないと思います。そのため、目安として自分の身長×0.3の長さをスタンス幅として設定してみましょう。
例)160cm×0.3=48cm
ただ、これはあくまで目安なので、実際にそのスタンスで乗ってみて、違和感があれば変えてみたり、スタイルによって調整したりして自分なりのベストなスタンス幅を見つけてみる必要があります。
私は身長が160cmですが、スタンスは50cmで乗ることが多いです。板の長さによっても変えているので、あくまで基準は目安としてその都度調整するのがおすすめですよ。
ちなみに、スタンス幅の測り方は、両足のビンディングの中心となる部分の距離を直接測ります。
推奨スタンスで重心を確認
スタンスの基準値を参考にしながらスタンス幅の長さが決まったら、実際にビンディングの取り付けに進んでいきますが、板のどのネジ穴につけたらいいかわからないですよね。
スタンス幅は同じでも、ノーズ寄りのネジ穴につけるのか、テールよりのネジ穴につけるのかによって乗り心地がかなり変わってくるので適当につけるのはNGです。
おすすめの方法としては、推奨スタンスで重心を確認し、そこを基準にスタンス幅をずらしていく方法です。
推奨スタンスを基準にし、左右同じビスの穴分ずらせば重心は変わりません。推奨スタンスのところにビンディングを置いてみて、自分のスタンス幅になるまで広げたり狭めたりしてみてください。
ちなみに、推奨スタンスとは、板のメーカーが適正と定めているビンディングの位置のことです。どの板にも必ず推奨スタンスの印がありますので、自分の板の推奨スタンスを確認してみてください。
板の長さも身長によってある程度決まってくるので、スタンス幅がよくわからないという場合は、はじめは推奨スタンスにしても問題ないでしょう。
やりたいことによってスタンスを微調整
スタンス幅は身長によってある程度基準値がありますが、やりたいスタイルによっても変えていくことが多いです。
ここでは、それぞれのスタイルに適したスタンス幅をご紹介していきますので、自分の興味のあるスタイルのスタンスを参考にしてみてくださいね。
グラトリにおすすめのスタンス幅
グラトリを極めていきたいという方は、基準のスタンス幅より少し広めにセッティングすることをおすすめします。ビス穴で言うと、1個分広めにセッティングするといいですね。
ただ、グラトリに向いているスタンス幅は人それぞれ好みがありますし、やりたいグラトリのトリックの系統によっても変わってきますので、いろいろと試してベストなスタンスを見つけてみることをおすすめします。
参考としては、一般的にスタンス幅が広いほうがバター系のトリックがしやすくなりますし、逆にスタンス幅が狭いほうがオーリーはかけやすくなります。このあたりは個人差がありますので、基準より少し広めに設定して実際に滑りながら微調整するのがいいでしょう。
カービングにおすすめのスタンス幅
カービングでキレキレのターンをしたいという場合は、基準のスタンス幅より少し狭めにセッティングするといいでしょう。
スタンスが狭いほうが、板のエッジが雪面にしっかりと接触してエッジの効きを最大限に活かすことができます。ただ、スタンスが狭くなればなるほど、バランスを取りにくくなってしまうので、いきなり狭すぎるスタンスにするのではなく、微調整で様子を見るのがおすすめです。
パウダーにおすすめのスタンス幅
パウダーに適したスタンス幅は、いわゆる推奨スタンスです。先ほどの身長×0.3で求めた幅で設定してみましょう。
パウダーを滑る場合、スタンス幅が広すぎると重心が低くなって板の浮力を活かしきれなくなってしまいますし、狭すぎてもバランスがとりにくくなってパウダーの中で埋もれてしまう可能性が出てきてしまいます。
パウダーを滑る場合は、重心の位置が後ろにあったほうが浮力を出しやすいので、後ほど説明するセットバックを入れるのがいいでしょう。
初心者さんにおすすめのスタンス幅
初心者さんにおすすめのスタンスも、推奨スタンスでOKです。
スタンス幅が広くなると、安定性は増しますが板のコントロールが難しくなります。逆に、スタンス幅が狭くなると、板の扱いはしやすくなりますが、安定性が低くなります。
「転ぶことは少ないけれど、ターンがなかなかできない」という方は、試しにスタンス幅を基準より少し狭くしてみるなどの調整をするといいでしょう。
スノーボードのアングル(角度)の決め方
スタンス幅が決まったら次はアングルを決めていきましょう。アングルとは、ビンディングを固定した時の角度のことです。アングルは左右のビンディングそれぞれ個別に設定できます。
アングルもスタンス幅と同様、個人個人で好みの角度がありますし、やりたいスタイルによってもかなり変わってきますので、一度決めたらずっとそのアングルで滑り続けるというよりは、その都度、試行錯誤しながらベストなアングルを見つけていくのがおすすめです。
アングルは、本当に奥が深いです。僕自身も、カービングをメインで滑るときと、パークメインで滑るとき、パウダーを滑るときなどでアングルは都度変えたりもしています。カービングをメインで滑るとなっても人によって好みのアングルがありますので、いろいろ試してみるのがいいでしょう。
そもそもアングルで何が変わるの?
初心者のころは「アングルってそんなに大事?」と感じることがあるかもしれませんが、アングルを変えることによってどう滑りに影響するかを知っておくことで、セッティングのときにイメージが湧きやすくなります。
アングルの基本的な考え方としては、角度が外側に向けば向くほど先行動作を入れやすくなるということです。体を開きやすい分、体のねじりを板に伝えやすくなるのです。
アングルは大きく分けると両足が同じ向きにセッティングされている「前振りスタンス」と両足が反対向きに開いた状態の「ダックスタンス」の2種類があります。
前振りのアングルは両足が同じ向きになっているので、ターンの先行動作がしやすく、板も踏み込みやすいですが、逆にスイッチ(いつもの向きと逆に滑ること)はやりにくくなります。
ダックスタンスのアングルは両足ともに外側を向いているので、スイッチがやりやすくなりますし、グラトリもいろいろな向きのトリックがやりやすくなります。反対に、板を踏み込む力は前振りより弱くなりますので、カービングには向いていないアングルとなります。
アングルによってやりやすいスタイルがかなり変わってきますので、自分がやりたいスタイルを見つけてアングルのセッティングを行うとスムーズでしょう。
レギュラーかグーフィーか確認
自分でアングルのセッティングを行うときは、まずレギュラースタンスかグーフィースタンスかを確認することからはじめます。
レギュラースタンスは左足を前にしながら滑るスタンスで、グーフィースタンスは右足を前にして滑るスタンスです。1回でもスノーボードをしたことがある方であれば、自分がどちらのスタンスかわかっていると思いますが、もし、レギュラーなのか、グーフィーなのか定まっていない方は【初めてスノーボードに行くなら知っておきたい前知識】の内容も参考にしながら決めて行くといいでしょう。
スタイル別のおすすめアングル
ここからは、スタイル別におすすめのアングルを見ていきましょう。あくまで目安なので、自分にとってやりやすいアングルは、目安を参考にしつつ、自分で調整しながら見つけていくのが一番の近道です。
グラトリにおすすめのアングル
グラトリメインで練習していく方は、両足が外側に向いているダックスタンスがおすすめです。
具体的なアングルは「前足9°、後ろ足―9°」「前足6°、後ろ足―6°」あたりがやりやすいでしょう。まずはこのあたりのアングルを試してみて、少しずつ調整しながら自分に合ったアングルを探していきましょう。
カービングにおすすめのアングル
カービングは板の踏み込みが重要になってくるので、進行方向に対して力を与えやすい前振りスタンスがおすすめです。
具体的なアングルは「前足30°~21°」「後ろ足18°~3°」あたりです。カービングのアングルについても、人それぞれ好みがかなりわかれてきます。前足のアングルを極端に入れる人もいれば、後ろ足を0にする人もいます。
カービングは前振りのほうがやりやすいですが、スイッチで滑ることがある方や、グラトリやパークなども楽しみたい方は、あまり極端に角度をつけすぎないのがおすすめです。
パウダーにおすすめのアングル
パウダーにおすすめのアングルは一概にこれ、というものはありません。ただ、カービングのように板を立ててエッジングする必要はそれほどないことと、パウダーツリーランをする場合はスイッチで滑らざるを得ないシーンが出てくるので、前振りよりはダックスタンスもしくは後ろ足0°がおすすめです。
具体的には「前足27°~15°」「後ろ足0°~-6°」あたりで滑ってみて自分なりに調整してみてください。
初心者さんにおすすめのアングル
初心者の方は、まだ自分がどのスタイルを極めていきたいか決まっていない方がほとんどだと思いますし、中にはレギュラースタンスなのか、グーフィースタンスなのか定まっていないこともあるでしょう。
そのため、まだスノーボードを滑ることに慣れていないうちは「前足15°、後ろ足0°」がおすすめです。後ろ足が0°であればターンの練習もしやすいですし、もし「レギュラーだと思っていたけれどグーフィーかもしれない」となったときも切り替えがスムーズにできます。
アングルによってはドラグしてしまうことも|解決法は?
アングルを決めていざセッティングしてみたものの「板からブーツがはみだしている」という状態になることがあると思います。
板からブーツがはみ出して滑っているときにブーツが雪面に当たることをドラグと言いますが、ドラグしてしまうとターンの練習に支障が出てしまったり、キレキレのカービングをしたときにブーツが緩衝してうまくカービングができなかったりしてしまいます。
セッティングしたアングルやブーツの大きさによってドラグしてしまうこともありますが、通常はかかととつま先それぞれ2cmくらいははみ出していても問題ありません。もしそれ以上はみ出してしまってドラグが起きているという場合は、以下の方法でドラグを解消してみてください。
・ビンディングのセンタリングとアングルを調整する
・プレートでビンディングの高さを底上げする
・太い板に替える
・ドラグしないヒールカップの高いビンディングに替える
センタリングについては次の章で詳しくお伝えしていきます。
また、プレートとは板とビンディングの間に挟んでビンディングの高さを底上げすることで、ドラグを防ぐことができるアイテムです。
参考記事:プレート|板以外のアイテム&裏技でもカービングターンが快適に
少しお金がかかってしまいますが、板やビンディングを替えるという方法もあります。ただ、太い板に替えるとドラグを防ぐことはできますが、太くなる分、切れのあるカービングをするのが難しくなってしまうので、個人的には板はそのままでビンディングを替えてドラグを防ぐ方法がおすすめです。
キレキレのカービングをしたいけど、ドラグが気になる!という方は、サロモンのホログラムというビンディングがおすすめです。ヒールカップの構造上、カービングのバックサイドターンの時、ヒールカップが雪面に当たらず、快適なカービングターンができます。フレックスもちょうど良い硬さなので、グラトリやパークも楽しみたい方にもおすすめです。
センタリングを調整してみよう
センタリングの調整とは、ビンディングを板の中心に対して前後させて調整することを言います。
基本的には真ん中にセッティングしていきますが、先ほどお伝えしたようにブーツがはみ出してドラグしてしまうような場合にはセンタリングを中心からずらしてブーツがはみ出さないようにすることも可能です。
センタリングを調整する場合はビンディングのディスクのネジ穴を入れる溝を縦にすることで調整することが可能になります。
セットバックを調整してみよう
セットバックとは、スタンスの中心をテール側に寄せて重心の位置を後ろに移動させることを言います。
セットバックを入れるとノーズ部分が長くなるので、パウダーを滑るときに浮力が増したり、ターンに安定感が生まれてカービングがしやすくなったりなどいろいろとメリットが大きいです。
デメリットとしては、スイッチで滑りにくくなるという点が挙げられますが、カービングをメインで滑る方やパウダーをメインで滑る方はセットバックを入れることをおすすめします。
初心者の方で、レギュラーかグーフィーかまだ定まっていないという方や、グラトリメインでスイッチで滑ることが多い方はセットバックを入れないほうがいいでしょう。
有名選手やプロのスタンス&アングル
ここまでで、スタンスとアングルの決め方についてご紹介してきましたが、この章では、有名選手やプロのライダーのスタンスやアングルを見ていきましょう。
憧れの選手と同じスタンス&アングルにしたり、マネしたい滑りをしているプロのスタンス&アングルを参考にしてみるのもいいでしょう。
※スタンスもアングルもこまめに変えるものなので、常にこのセッティングであるとは限りません。あくまで参考程度にしてください。
平野歩夢
ジャンル:ハーフパイプ
スタンス:52cm
アングル:前足15° 後ろ足-6°
国母和宏
ジャンル:ハーフパイプ・バックカントリー
スタンス:55.8cm
アングル:前足21° 後ろ足-15°
平岡卓
ジャンル:ハーフパイプ
スタンス:54cm
アングル:前足15° 後ろ足-9°
ショーンホワイト
ジャンル:ハーフパイプ
スタンス:58.4cm
アングル:前足12° 後ろ足-3°
角野友基
ジャンル:スロープスタイル
スタンス:52cm
アングル:前足9° 後ろ足-9°
平間和徳
ジャンル:カービング
スタンス:60cm
アングル:前足36° 後ろ足27°
瀧澤憲一
ジャンル:カービング・グラトリ
スタンス:56cm
アングル:前足12° 後ろ足-12°
スタンサーを試してみるのもあり
スタンスもアングルも自分に合ったセッティングを試行錯誤しながら見つけていくのがベストですが、「自分に合うセッティングがいまいちわからない…」という方も多いと思います。
また、いちいちセッティングを変えてベストを見つけるのがめんどうだという方もいらっしゃるでしょう。
そんなときは、「スタンサー」という計測器を試してみるのもいいと思います。スタンサーとは一部のスノーボード販売店で導入されている機械で、その人の骨盤や足首の可動域から身体に合ったスタンスとアングルを教えてくれるものです。
はじめからスタンサーで測ってみてもいいですし、ある程度自分で調整してセッティングを試した後に改めてスタンサーで確認してみるというのも、新しい発見があっておもしろいと思います。
まとめ
いかがでしたでしょうか。スノーボードのセッティングと聞くととても難しそうに感じてしまうかもしれませんが、決め方のコツさえ知っていれば初心者の方でも簡単にセッティングすることができます。
いろいろなスタンスやアングルを試してみることで、自分が滑りやすいセッティングがわかってきますし、いろいろなことを考えながら滑ってくことになるので上達も自然と早まります。
もし、スノーボードのセッティングや滑り方についてわからないことや質問したいことがあれば、お気軽に私たちインストラクターにご相談くださいね。
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