ウィンタースポーツの代表格、スノーボードは滑走時のスピード感やジャンプをした時の浮遊感などが魅力で、多くの人がやみつきになっているスポーツですが、安全に楽しむためにはしっかりと装備をすることが大切です。
特に頭はしっかりと保護する必要がありますので、安全面に配慮してスノーボード用のヘルメットを着用するのがおすすめです。
スノーボードのスキルをステップアップさせるうえで、多少自分のレベルより背伸びをした内容を練習することも出てきますが、ヘルメットをかぶっていれば万が一激しく転倒してしまった場合にも安心です。
そこで今回は、スノーボードを滑る際のヘルメットの必要性や、ヘルメットを被るメリット、スノーボード用のヘルメットを選ぶ際のポイントについて、現役のインストラクターである私たちが詳しく解説していきたいと思います。
そもそもヘルメットって必要??
スノーボードをしている方の中には「ヘルメットって必要なのかな」と思っている方も少なくないのではないでしょうか。
確かに、日本ではヘルメットをかぶらないほうがカッコいいという潜在意識があるようで、ヘルメットなしでスノーボードを楽しんでいる方も多いですよね。実際のところ、必要なのでしょうか、なくても大丈夫なのでしょうか。
海外ではヘルメットの着用率が90%以上
スノーボードの滑走時のヘルメット着用は、個人の自由ですし、かぶらないほうがファッション的には好きという人も多いと思います。
ただ、カナダやニュージーランドをはじめとした海外諸国では、スキーヤーも含めてヘルメットの着用がほぼ100%のようです。上級者になればなるほど、ヘルメットの着用を徹底しています。
それは、スノーボード中の事故で死亡事故など大きな事故が多発したことがきっかけでヘルメットの着用が普及しました。
海外のスキー場では、中級者以上のスノーボーダーはかなりのスピードを出して滑っていて、遅くても時速60km、早い人だと時速100km近くのスピードを出して滑っているので、転倒した時のリスクを考えてヘルメットを着用しているのでしょう。
現在の日本ではまだまだヘルメットの着用率が低いですが、安全性を考えたらやはりヘルメットはかぶっておいたほうが安心ですね。
自分の子供にスノーボードさせるなら?
ヘルメットの必要性がいまいちピンとこない、という方は、仮に自分の子供にスノーボードをさせるときに、ヘルメットを装着させるかどうかを考えてみるといいかもしれません。
子供がスノーボードをしたいと言ってきたとき、あなたはヘルメットを被らせますか?それとも「ダサいから」という理由で被らせませんか?
おそらく、ほとんどの方が子供の安全性を考えてヘルメットを被らせるのではないでしょうか。
中級者以上になってくると「自分は派手に転んだりしないから大丈夫」と思ってしまうと思いますが、自分のスキルが高くても初心者スノーボーダーにぶつかられて転倒する可能性もあります。
また、「パークでキッカーを跳びたい」「カービングでスピードを出したい」など新しいジャンルに挑戦するときに、頭を守るヘルメットがあったほうが積極的に挑戦しやすくなるでしょう。
ヘルメット着用を強くおすすめするのはこういう人!
スノーボードをするなら必ずヘルメットを着用しなければいけない、ということは決してなく、かぶるかかぶらないかは個人の自由です。
ただ、より安全性を考えて以下のような方はヘルメットを着用したほうが安心してスノーボードを楽しめるのではと考えます。
初心者の方
ターンがまだスムーズにできない初心者の方は、ヘルメットの着用をおすすめします。
なぜなら、初心者のころにターンの練習をする際、ほぼ100%の方が後ろ向きの逆エッジを経験して頭をぶつけてしまう可能性があるからです。
安全な転び方を完璧にマスターできていれば、逆エッジになっても頭を強くぶつけてしまうことはありませんが、なかなか初心者のころは転び方も慣れていないので、できるだけヘルメットをつけて練習したほうが痛い思いをしなくていいと思います。
カービングなどでスピードを出す人
中級者以上の方でカービングに挑戦したいと考えている方は多いと思います。カービングに挑戦する方もヘルメットがあったほうが安心でしょう。
カービングのレベルにもよりますが、急斜面でハイスピードでカービングをしたい、という方は、万が一の転倒に備えてヘルメットがあったほうが攻めた練習ができるでしょう。
パークでキッカーを跳びたい人
パークスタイルに挑戦したい方もヘルメット着用を強くおすすめします。特に、キッカーを跳びたいという方は、ヘルメットがあったほうが安心して練習できます。
オリンピックに出るような超上級者の選手も、パークスタイルの選手は特にヘルメットを着用しています。どれだけ上手でも、万が一キッカーで着地に失敗して転んでしまった時に頭を強打するリスクがあるということです。
普段フリーランで滑るときは帽子スタイルで、パークでキッカーを跳んだりジブを楽しんだりするときだけヘルメットを着用している人も多いです。シチュエーションに合わせて帽子かヘルメットを選ぶのもいいですね。
バックカントリーをする人
バックカントリーはスキー場の管理区域外のエリアを滑るスタイルのことです。バックカントリーでは、管理されていない自然のままのバーンを滑っていくので、立木がたくさんあったり、岩が出ていたり、時には崖があったりなど、危険な場所がたくさんあります。
バックカントリーで滑る際は、深雪のパウダースノーであることが多いので、板のコントロールをとられてしまうこともしばしばです。板のコントロールを失って立木にぶつかってしまうと、意識を失うこともありますので、命を守るためにもヘルメットの着用がおすすめです。
スノーボードでヘルメットを被るメリットとは
「スノーボードをするならヘルメットをかぶったほうがいい」というのはよく聞く話ですし、「できればやっぱり、かぶりたくない…」という方は少なくないと思います。
ヘルメットをかぶるメリットは安全のためだけではなく、いろいろとあります。ここでは、ヘルメットのメリットについて詳しく見ていきましょう。
頭を守る
言うまでもないかもしれませんが、ヘルメットをかぶる一番のメリットは、頭部のダメージの軽減です。スノーボードをしていると、特に初心者のころは転んで頭を打ってしまうことがよくあります。
中級者以上になっても、キッカーの着地で失敗したり、グラトリに失敗して逆エッジになったり、思っている以上に頭をぶつけてしまう危険性はあるのです。
また、「雪はやわらかいから転んで頭を打っても大丈夫だろう」と勘違いされている方も多いのですが、アイスバーンのカチカチのときはコンクリートのように危険ですし、スピードが出た状態で転んでしまうと、たとえやわらかい雪の上でも大きな衝撃がかかります。
ヘルメットがあるのとないのとでは、頭が受ける衝撃吸収に大きな差が出るのです。
防寒対策
ヘルメットは帽子のように空気を通すことがないので、寒さ対策にも効果的です。
サイズを調整すれば、ヘルメットの下に帽子をかぶることもできますので、二重であたたかいです。
「春先などは逆に暑いのでは?」と心配になるかもしれませんが、ベンチレーションがついたヘルメットであれば、空気穴の調整ができますので、春先や暑くなるタイミングでも問題ありません。
頭に雪がつかない
雪が降っているときにスノーボードをしたり、転んでしまったりしたときに、帽子をかぶっていると頭に雪がついてしまいます。
頭に雪がつくと、どうしてもそこから冷えてきてしまいますし、休憩時などに温かい空間にいると、ついた雪が溶けて濡れてしまいます。濡れた帽子を再びかぶるのはかなり不快ですし、冷えの原因にもなってしまいます。
ヘルメットをかぶっていれば、雪が降っても頭の上に雪が積もることはありませんし、転んで頭に雪がついても軽くはらえばすぐに落とすことができます。
休憩時に、ついた雪が溶けて濡れてしまう心配もありませんので、休憩後も快適に過ごすことが可能ですよ。
ゴーグルが曇りにくい
リフトに乗った時など、ゴーグルを一時的に上にあげておくタイミングがあるかと思いますが、このとき、ニット帽だと頭から出ている水蒸気によってゴーグルが曇ってしまうことがあります。
スノーボードを滑ることで体温は上がっていますが、外気温が低いので、その差で水蒸気が水滴になってゴーグルについてしまうのです。
一方、ヘルメットであれば気密性が高いので、ゴーグルを一時的に上にあげても曇ってしまう心配が少なくなります。
転んでもゴーグルが飛ばない
スノーボードの転倒で多くの人が経験しているであろう困りごと、それは転倒の衝撃でゴーグルが帽子とともに吹っ飛んでしまうことでしょう。
ゴーグルが遠くに飛んでしまうと、回収するのも大変ですし、ゴーグルの中に雪がついてしまうと、その後の処理がめんどうになります。
ヘルメットを被っていれば、ゴーグルをヘルメットに装着することもできますし、ヘルメットの中にゴーグルをすることもできますので、転んだ衝撃でゴーグルが飛んでしまうという被害を防ぐことが可能です。
Goproの撮影がしやすい
Goproをはじめとしたスポーツ用のアクティブカメラを使ってスノーボードを滑っているところを撮影する方は増えていますよね。自分が滑っているところを臨場感あふれる映像で残すことができるので、人気がかなり高まっていますが、自撮り棒に取り付けて滑るのは少し面倒でしょう。
片手がふさがってしまうので、滑りに影響が出てしまいますし、転んだときに棒が折れてしまったという方もちらほらいます。
ヘルメットであれば、Goproを装着することができるので、ハンズフリーで滑っているときにダイナミックな映像を撮ることが可能です。
ヘルメットがダサいと感じてしまう人へ
ここまででヘルメットの必要性やメリットをお伝えしてきましたが、それでもやはり「ヘルメットをかぶってスノーボードをするのはダサい」と感じてしまう人はいると思います。
ヘルメットがダサいと感じてしまう理由は、「単純にファッション性がなくてダサい」「転ぶ前提みたいでダサい」「雪の上だから安全なのにヘルメットをつけるなんてダサい」などさまざまだと思います。
しかし、前の章でもお伝えしましたが、スノーボードでヘルメットをかぶるのがダサいと思っているのは日本くらいのもので、欧米では90%以上がヘルメットを装着してスノーボードを楽しんでいます。世界で活躍するスノーボード選手たちもほとんどがヘルメットを装着しています。
他にも、「ヘルメットをかぶっているということは転ぶ前提=初心者丸出し=ダサい」と感じている方もいるかもしれませんが、むしろヘルメットをかぶっているということは、それだけスノーボードの危険性も理解しているということですし、より難易度の高いジャンルに挑戦しているということなので、逆にかっこいいんです。
スノーボードのヘルメットの選び方
スノーボードを安全に楽しむために必要なアイテムであるヘルメットですが、より快適に使うために選ぶ時に気を付けてもらいたいポイントがいくつかあります。
安全基準を満たしているか
スノーボード用のヘルメットを選ぶ際は、安全基準をクリアしているかどうかをしっかりと確認しましょう。
現在、日本においてはスノーボード用のヘルメットに関して安全だと示す規格がありませんが、世界的には、アメリカの「ASTM」とヨーロッパの「CE」といった2種類の安全規格があります。
この二つのどちらかの基準を満たしているヘルメットであれば、安心して使うことができます。
逆に、これらの安全基準がないヘルメットは危険である可能性があるので、購入するのは避けるべきでしょう。
自分の頭にフィットするか
より安全性の高いヘルメットを着用できるよう、自分の頭にフィットするかどうかも事前に確認することが大切です。
被ってみて圧迫感があったり、緩くてぐらつきがあったりしないかどうか、試着して選ぶのが理想です。
もし、どうしてもインターネットで購入したい場合や、試着して買うのが難しい場合は、自分の頭のサイズを測ってから選びましょう。特に海外製のヘルメットは、海外の方向けのサイズに合わせて作られているので、事前にサイズを確認して選んでください。頭のサイズの測り方は、耳のすぐ上にメジャーをあてて平行に外周を測ります。
ヘルメットの中に帽子を被りたいという方や、髪のボリュームがあるという方は、少し大きいサイズを選択するのがいいでしょう。この場合もできれば、実際にかぶる帽子を持参して試着するのが安心です。
最近は、アジア人の骨格に合わせた「アジアンフィット」や、日本人の骨格に合わせた「ジャパンフィット」のモデルも販売されているので、気になる方はそちらもチェックしてみてくださいね。
サイズ調整機能はついているか
より頭にフィットしたヘルメットを選びたいという方は、サイズ調整ができるモデルを選ぶこともおすすめです。
ヘルメットのサイズはS・M・Lのサイズから選ぶのが一般的ですが、これだけだと頭にしっかりとフィットしない場合もあります。ダイヤル操作でのサイズ調整機能がついていれば、自分の頭のサイズにぴったりと合わせられますし、ヘルメットの中にかぶる帽子の厚みが変わっても簡単にサイズの調整をすることができます。
軽さ重視か?頑丈さ重視か?を選ぶ
スノーボード用のヘルメットには大きく分けてインモールド構造とハードシェル構造の2種類の構造があります。
インモールド構造は、シェル(外殻)と衝撃緩衝材が一体に成形された構造のヘルメットです。一体になっているので軽いのが特徴で、ジャンプなどのトリックを楽しみたい上級者におすすめのタイプです。一方、もう一つのハードシェル構造と比べると耐久性に劣り、へこみやすいという難点もあります。
ハードシェル構造は、シェルと衝撃緩衝材が別々に配置された構造になっているので、頑丈な作りになっています。安全性が極めて高いため、レーシング用のヘルメットとしても多くの選手に愛用されています。しかし、耐久性には優れている一方、重量は重たいので、女性の方やヘルメットの装着にまだ慣れない方は注意が必要です。
ベンチレーションの有無をチェック
ベンチレーションは通気用の穴のことです。ベンチレーション付きのヘルメットであれば、滑っていて暑くなってしまった時もヘルメット内の熱気を外に逃がしてくれるので快適に過ごすことができます。
特に、気温が上がってくる春先にスノーボードをするときは、ヘルメット内がこもりやすいのでベンチレーションは重宝します。
また、ヘルメットの中が蒸れて衛生面が気になるという方は、イヤーパッドやインナーパッドが取り外し可能なタイプを選ぶと、定期的なお手入れが簡単にできておすすめです。
その他の機能性も確認
最近はヘルメットにもいろいろな機能がついたものが出てきているので、自分に合った機能がついているものを選ぶのもいいでしょう。
たとえば、つば付きタイプのヘルメットであれば、見た目がおしゃれになるだけでなく、ゴーグルの上に雪がついて曇ってしまうのを防ぐ効果があります。
また、バイザー付きタイプのヘルメットも出てきています。ゴーグルをなかなかつけたがらないお子様や、普段から眼鏡を使っている方はバイザーつきのヘルメットを試してみてもいいでしょう。
ただ、バイザー付きのヘルメットを選ぶ場合は、ゴーグル同様、レンズの種類をきちんと確認することが重要です。また、機能が増える分、重さも増してしまうことは注意が必要でしょう。
スノーボード用ヘルメットのおすすめブランド
それでは最後に、スノーボード用ヘルメットのおすすめブランドを見ていきましょう。
SMITH
クオリティの高いゴーグルで有名なSMITHから出ているヘルメットは、軽量インモールド構造(シェルと衝撃緩衝材が一体化)を施したヘルメットです。ヨーロッパやアメリカの安全基準をクリアしたヘルメットのなかではトップクラスの軽さが魅力です。
ヘルメットをつけると重いから苦手、という方に特にお勧めできます。軽量なだけでなく、優れた耐久性も備えているので、激しく転倒することのあるスロープやハーフパイプなどの選手からも人気です。
また、ベンチレーションホールも配置されているので蒸れにくく快適に装着できるのも魅力です。
ANON
ANONのヘルメットは耐久性とフィット感を兼ね揃えています。ヘルメット後方には伸縮クロージャ―がついているので頭部形状に合わせて、自動でフィットしてくれてとても便利です。
機能性が高いですが、値段がリーズナブルなので、試しにヘルメットを購入してみようか迷っている方にもおすすめです。
オークリー
オークリーのヘルメットはオリンピック選手たちをはじめ、多くのトッププレイヤーたちが愛用しているヘルメットです。多方向の衝撃から頭を保護する「MIPS」という機能を搭載しているため、あらゆる衝撃にも対応してくれます。
また、抗菌効果のあるヘッドライナーや、フィット感を調整できるダイヤル式のシステムなども搭載しているため、包み込むような気持ちのよい装着感も人気の秘密です。
高機能ながら比較的リーズナブルですし、オークリーのゴーグルとの相性も抜群です。
sandbox
元祖ツバ付きヘルメットと言えるモデルを作ったサンドボックスは、多くのスノーボーダーから愛されているヘルメットメーカーです。
創業当時、スノーボードでヘルメットを被ることが一般的ではなかったため、ツバ付きにすることでファッション的に受け入れられるようにデザインにしたのがきっかけだったそうです。ファッション重視のため、カラーバリエーションは他のブランドを圧倒する数です。
機能面では他のブランドより多少劣る部分はありますが、ファッション重視で安全性も手に入れたいという方にはおすすめできます。
Bern
Bernは2004年アメリカボストンで誕生したヘルメットブランドで、ツバ付きのスノーボード用ヘルメットが人気です。サイドボックス同様、ツバ付きヘルメットのパイオニア的存在で、ファッション性も高いモデルが多いです。
ファッション性が高いので、パークやグラトリなどをメインとするストリート系のスノーボーダーに人気が高い印象です。
ジャパンフィット対応なので、優れたフィット感で快適にスノーボードを楽しめるでしょう。
また、値段もかなり安く手に入るので、「ファッション性と値段の安さを重視したい」という方におすすめです。
まとめ
今回は、スノーボードを滑る際のヘルメットの必要性や、ヘルメットをかぶるメリット、自分に合ったヘルメットの選び方についてお伝えしてきました。
ヘルメットになじみのない方は「必要ないのではないか」「自分は派手に転ばないから大丈夫」と思ってしまうかもしれませんが、スノーボードを安全に楽しむためには、ぜひとも用意しておきたいアイテムです。
機能性だけでなく、デザインもいろいろなタイプが出ていますので、ゴーグルやウエアとの組み合わせも楽しみながら、自分に合ったヘルメットを探してみてはいかがでしょうか。
ヘルメットだけでなく、スノーボードアイテムについての疑問や、スノーボードスキルについてのご質問があれば、ぜひお気軽に私たちインストラクターにお尋ねください。
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