スノーボードをある程度滑れるようになってきたら、新しいジャンルに挑戦したくなってきますよね。中でも、グラトリは気軽に誰でも挑戦できますし、比較的安全なのでスノーボードのステップアップをしたい方におすすめです。
そして、「グラトリに挑戦しよう」と決めたら、自分に合ったグラトリ板を入手するのが上達の秘訣です。
グラトリのトリックをマスターするためには、もちろんスキルを磨いていくことも重要なのですが、グラトリに適した板を使って練習することで、より簡単に、よりスピーディーに上達することが可能になります。
ただ、グラトリ初心者のときには、どの板がグラトリに適しているのか、自分に合ったグラトリ用の板はどのように選べばいいのかよくわからないと思います。
そこで今回は、現役のA級インストラクターである私たちが、グラトリ初心者に向けてグラトリに適した板の選び方や、グラトリ初心者が一気に上達するのを手助けしてくれるおすすめの板について詳しく解説していきます。
グラトリを最速でマスターするためには板選びがけっこう重要!
グラトリに挑戦したいな、と思っていても、グラトリ初心者にとってみると少しの技でもかなりハードルが高く感じてしまいますよね。
中には「グラトリはスノーボード上級者にならなければやってはいけない」と思っている方もいらっしゃいます。
もちろん、グラトリをマスターするためには、ある程度スノーボードスキルが必要であることは確かですが、板をグラトリに向いた適切な板にすることで、かなりハードルが下がっていきます。比較的ラクにグラトリの練習をすることができるでしょう。
逆に、グラトリに適していない板でグラトリをいくら一生懸命練習してもなかなかうまくなりません。必要以上に時間と労力がかかってしまうことになります。
グラトリを最速でマスターしたいのであれば、スキルを磨くことはもちろんですが、グラトリをしやすい板に思い切って変えてしまうのが上達の近道と言えますよ。
グラトリ初心者はまずこれ!グラトリ初心者が選ぶべき板の特徴
スノーボードショップに行って「グラトリに向いている板が欲しいです」というのもアリですが、ショップ店員が必ずしもグラトリに精通しているとは限りません。
また、グラトリと一言で言っても、プロ並みの玄人がするトリックに向いているグラトリ板なのか、初心者が簡単なトリックを練習するのに向いているグラトリ板なのかはまったく異なってきます。
そのため、グラトリ用の板を選ぶ際は、ショップに行く前に前もって下調べをしておくことが大切です。
ここでは、グラトリ初心者が練習をよりやりやすくするための板選びのポイントを4つにわけて説明していきます。
ツインチップ
スノーボードの形状には大きく分けて「ツインチップ」「ディレクショナル」「ディレクショナルツイン」の3つがあります。
グラトリを練習しやすいのは断然ツインチップ形状の板です。ツインチップはノーズ側とテール側が同じ形をしていて、ビンディングを取り付ける穴が板の真ん中にあるため、ノーズ側の先端とテール側の先端までの長さが同じで、左右対称なのが特徴です。
グラトリでは、スピンした時にスイッチスタンスで滑ることが多くなるため、左右対称でどちらを先端にして滑ってもいいような左右対称のツインチップ形状がやりやすくなります。
やわらかめ
グラトリでは筋力よりもむしろ板の反発を使って高く飛ぶことが大切になってくるので、ある程度は板の弾力があるほうがいいです。
ただ、グラトリ初心者の方は、板がやわらかければやわらかいほど板の扱いが楽になるので、グラトリも練習しやすくなります。初心者のうちは、とにかくやわらかい板を選ぶ方が安心でしょう。
ある程度グラトリが上達してきて、より反発が欲しくなってきたり、回転数を上げて難易度の高い技に挑戦したくなってきたりしたら、少し硬めの板を選ぶようにするといいですね。
少し硬めの板ははじめ扱いが難しいですが、反発力があるので高く飛べるようになり、難易度の高い技に挑戦しやすくなってきますよ。
短め
グラトリを重点的に極めていきたいのであれば、板の長さにも注目するといいでしょう。
スノーボードの板は長いほうがスピードを出したときの安定感が出てきますが、長い板だとグラトリで板をスピンさせる際に扱いにくくなってしまいます。
たくさん板を回してみたい、まずは板を回す感覚を覚えたい、という場合は適性の長さより5センチほど短い板を選ぶことをおすすめします。
ただ、短い板はグラトリをする分には適しているのですが、スピードを出した時に安定しないので、ハイスピードでカービングしながらグラトリもしたいという方は、短すぎる板ではなく、身長に対して適性の長さを選ぶのがいいでしょう。
形状選びは慎重に
上から見たときの形状としてはツインチップ形状がおすすめであることはすでにお伝えしました。
一方、横から見たときの形状としては、大きく分けて「キャンバー」か「ロッカー」に分けることができます。
キャンバーは板の真ん中が反り返っている形状でスノーボード板のオーソドックスな形状とされています。ロッカーは板を真横から見た時にノーズとテールが緩やかに反り返っていてU字の形状になっています。
グラトリをするならロッカー形状が良いというのはよく言われることですが、個人的にグラトリ=ロッカー形状が良いとは言い切れないと思っていますので、慎重に選ぶことが大切です。
キャンバーは板の真ん中が反っている形状のため反発を利用しやすく、グラトリに限らずカービングにも適しています。グラトリだけでなくオールマイティにスノーボードを楽しみたい方はキャンバー形状の板を選ぶといいでしょう。
一方、ロッカーは雪面との接地面が少ないので逆エッジになりにくくプレス系の技がしやすいためグラトリに適している板と言われています。ただ、キャンバーに比べてエッジがかかりにくいのでカービングをはじめターンがしにくいという面もあります。
「とにかくグラトリを本気で極めたい」という方はロッカーの板を選んでみるのもアリでしょう。
グラトリに慣れてきたらやりたいスタイルで板を選ぼう
先ほどの章では、とにかくグラトリを初めてやりたい!という方向けに板の選び方をお伝えしましたが、グラトリ用の板と一言で言ってもやりたい内容やスタイルによって選び方も変わってきます。
この章では、ある程度グラトリに慣れてきた方に向けて、より的確な板を選ぶためのポイントをお伝えしていきたいと思います。
グラトリを極めていく段階になると、やりたいスタイルの方向性がある程度定まってきますので、そうなったらより自分のスタイルに合った板を選ぶ段階になります。ここまでくると、もはやグラトリ初心者ではなくなってきますね!
グラトリにもいろんなスタイルがある
先ほど、グラトリにもいろいろなスタイルがあるとお伝えしましたが、グラトリには大きく分けると3つのスタイルがあります。
・プレス系
・スピン系
・ラントリ系
の3つです。
プレス系は、その名の通りプレスをしたり、低回転の技をしたりするのがメインのスタイルです。スピン系は540°以上の高回転のトリックをするのがメインのスタイルです。ラントリ系はカービングをしながらグラトリを取り入れていくスタイルで高速でのトリックがメインになります。
どのスタイルも魅力的なグラトリのジャンルですが、それぞれのスタイルによって選ぶべき板が変わってきます。
たとえば、プレス系ならできるだけやわらかい板のほうが向いていますが、スピードが出ている中でトリックをしていくラントリ系は少し硬めの板のほうが安定します。そのため、一概に「グラトリ=やわらかい板のほうがいい」とは言えなくなってくるのです。
まずは、グラトリにはどんな種類があるのかをある程度知り、自分がどれを極めていきたいのかを考えながら板選びをしていくのがお勧めです。
フレックスで選ぶ
フレックスとは板の硬さのことで、フレックスによって板のしなり具合が変わってきます。
一般的に、グラトリはやわらかい板のほうがいいと言われているのでソフトフレックスを選ぶ方が多いと思います。もちろん、やわらかい板は板の扱いが楽なのですが、やりたいスタイルによっては別のフレックスを選ぶ方がいいでしょう。
具体的には
・プレス系メイン…ソフトフレックス
・スピン系メイン…ミドルフレックス
・ラントリメイン…ミドルフレックス〜ハードフレックス
がいいでしょう。
プレス系をメインでやりたい方や、グラトリ初心者の方で板の扱いに慣れていない方はとにかくやわらかいソフトフレックスの板がおすすめです。
スピン系をメインで行う方は高い反発力を得られるミドルフレックスがおすすめです。反発力があるので高速回転を目指しやすくなります。360°回転以上のトリックをしたい方はミドルフレックスを選ぶといいでしょう。
グラトリ初心者のときにやわらかい板で練習していた方は、ミドルフレックスに変えると最初は硬く感じてしまい違和感があるかもしれませんが、慣れてきて板の踏むべきポイントがわかってくるとさらにグラトリを上達させることができますよ!
ラントリはハイスピードのカービング中にトリックを行うため、やわらかい板だとスピードに耐えられず安定感が失われてしまう可能性が高いです。そのため、ラントリを練習したい方はハードフレックスか少なくともミドルフレックスの板を選ぶことをおすすめします。
シェイプで選ぶ
スノーボードのシェイプは板を上から見たときの形を指します。シェイプには主に3種類あり、ツインチップ、ディレクショナル、ディレクショナルツインがあることは前の章でもお伝えしましたね。
ツインチップはビンディングを付ける板の穴の部分を中心として、板の前後の形状が同じかつ長さも均一になっていますので、繰り返しになりますがスイッチスタンスでの滑りがやりやすくなるのが特徴です。
一方、ディレクショナルは板のノーズ部分が進行方向に少しだけ長い形状になっていて、重心がテール側にあるので安定性が増すという特徴があります。
グラトリに関して言えば、スピン系のトリックをするとスイッチスタンスで滑る機会が多くなるのでツインチップがお勧めと言えます。この点はグラトリ初心者の方におすすめの板の選び方と同じです。
ただ、スピードを出してカービングしながらラントリをやりたいという方は、カービング中の安定性も欲しいと思いますので、ディレクショナルの板を選ぶのがおすすめになります。もしくは、ディレクショナルツインでもいいですね。
形状で選ぶ
繰り返しになりますが、スノーボードは横から見たときの形状で大きくキャンバーかロッカーかに分かれます。厳密にいうと、ダブルキャンバーやダブルロッカーなどいろいろな形状がありますが、大元をたどればキャンバーとロッカーの2種類という認識でいいと思います。
「グラトリ初心者の板の選び方」のところでも触れましたが、キャンバーは板の真ん中が反り返っているので地面と板の間に隙間ができて反発力を利用しやすく、フリーランからグラトリまで幅広く楽しめます。そのため、ラントリを極めていきたい方や板の反発をうまくつかってトリックをしたい人はキャンバーの板を選ぶといいでしょう。
逆に、あまりスピードを出さずに低速でグラトリを楽しみたい方やプレス系のトリックを極めたい方はロッカーがおすすめです。
キャンバーはカービングもしやすいですし、板の反発を使えるようになれば回転系のトリックもやりやすいですが、形状の関係で逆エッジしやすい板とも言えます。グラトリをやりたいけど、とにかく逆エッジが怖い!という方はロッカーを試してみてもいいと思います。
ブランドで選ぶ
スノーボードの板はあらゆるブランドから出ているため、いざ選ぼうとすると迷ってしまいますよね。そんなときはグラトリ板で有名なブランドから選んでいくのもおすすめです。
おすすめブランド1:FNTC
価格が安くて機能性も高いブランドはFNTCです。FNTCはグラトリを愛するスノーボーダーからも高い人気があり、機能性もかなり満足度の高いものになっています。このブランドの板はグラトリを専門に作られているうえ、値段が安いのもありがたいですね。
おすすめブランド2:YONEX
YONEXはグラトリだけにとどまらず、幅広いジャンルを楽しめるような板を多数出しています。グラトリを含めスノーボードを全体的に幅広く楽しみたい方におすすめのブランドです。
おすすめブランド3:011 Artistic
011 Artisticは初めてグラトリに挑戦する方に特におすすめしたいブランドです。011 artisticの板は雪の接地面にフラットな部分を作ってある構造なので安定感があります。加えて反発性も高いので、まだグラトリに慣れていない方にも扱いやすい板になっています。
それぞれのブランドのおすすめの板については次の章でより詳しくお伝えしていきます。
初心者におすすめ!最初の一本におすすめのグラトリ板
「グラトリに挑戦してみたけど、どの板を選べば間違いないんだろう」と思っている方は多いと思います。
スノーボードの板は決して安い買い物ではないので、失敗したくない気持ちもあって決心に勇気がいりますよね。
そこでこの章では、グラトリ初心者の方がまず1本目に買うのにもってこいなおすすめの板をご紹介していきます。
FNTC TNT
まずは、日本で一番売れているとも言われているグラトリボート、FNTCのTNTシリーズです。
こちらの板はフレックスが柔らかめなので、グラトリに挑戦したい初心者の方も扱いやすくなっていて人気があります。
形状はダブルキャンバーになっていて、初心者の方でも簡単に板をしならせることができるので、いろいろなトリックに挑戦できます。さらに、ダブルキャンバーの欠点である反発力の低下を補うために板のセンターにバネが埋め込まれているので、しなりに加えて反発力も担保された、いわばパーフェクトな板と言えます。
ここまで機能性が高いのに価格がリーズナブルというのもうれしいポイントですね。
YONEX ACHSE
クオリティの高い板を作ることで有名なYONEXがグラトリのために本気で作った板が「ACHSE(アクセ)」です。
基本的に軽い板は、安定性が悪くなりがちなのですが、YONEXの板は振動吸収性能が高いカーボンボードという素材を採用することによってその問題を解決し、軽いのにしっかりと安定性のある板を完成させています。
しなりやすさと反発力、取り回しのしやすさを両立させているので、プレス・スピン・オーリーにおいてベストな反応を実現してくれますよ。
011 Artistic DOUBLE FLY
グラトリ系の板を作るメーカーとして有名な011 Artisticは、どの板を選んでもクオリティが担保されているので、失敗はないですが、グラトリ初心者でまずは最初の1本目、という方にはDOUBLE FLY (ダブルフライ)がおすすめです。
程よくやわらかい板なのでグラトリの基礎でもあるプレス系もやりやすく、初心者の方におすすめできます。
この板は011の数ある板の中でも癖がないのでどんな方にも扱いやすいでしょう。「グラトリに挑戦したいけど、扱えるか不安」という方はこちらの板がおすすめです。
RICE28 RT6
RICE28は国産ブランドの板でグラトリに特化しているブランドとしても人気が高いです。そのRICE28から出ているRT6が特におすすめの板です。
ツインチップ形状で反発の良さも兼ね備えているのでスピン系、ラントリ系など幅広く活躍できます。グラトリ界のオールラウンドボードと言っても過言ではないでしょう。
YouTubeなどで活躍している「いぐっちゃん」が「板が良すぎておもしろくないくらい乗りやすくてグラトリしやすい」と言っているくらい、誰でも扱いやすい板です。
NOVEMBER ARTIST
NOVEMBERのARTISTはとにかく乗りやすい板で、オールラウンドに活躍してくれます。
今までARTISTを乗っている人を何人も見ていますが、誰に聞いても「良い!!」と返ってきます。それくらい、誰にでも適応してくれる乗り心地です。
ちょうどいいミドルフレックスなので、グラトリだけに限定せずカービングも楽しむことができます。癖のない板なので、どんなスタンスで滑っても平均以上のパフォーマンスを出すことができます。
グラトリには挑戦したいけど、グラトリだけに限定するのはちょっと…という人にはかなりおすすめの板です。
MOSS CIRCUS
スノーボードの老舗ブランドであるMOSSから出ているCIRCUS(サーカス)はグラトリライダーとして名高い長谷川健太さんが監修しているグラトリ用のボードです。
形状がキャンバーとダブルキャンバーを融合させたようになっていて、他では見たことがない形状となっています。
プレスでの踏ん張りも効きますし、反発を利用して高いオーリーも実現させてくれます。グラトリならなんでもできる!というイメージなので、今後グラトリを本気で極めていきたい初心者の方におすすめの板です。
まとめ|グラトリが難しい!と感じたらレッスンを受けるのもアリ
今回は、グラトリ初心者の方に向けて、グラトリ用の板の選び方や、おすすめのブランド、板をご紹介してきました。
グラトリを上達させるためには、まず板をグラトリに適した板に変えるのがおすすめです。断然、トリックがやりやすくなります。これからグラトリに挑戦していきたい方は、ぜひ今回の記事を参考に自分に合ったグラトリ板を探してみてくださいね。
また、もし板を変えてもなかなかグラトリができるようにならない!という方は、プロのレッスンを受けてみるのもアリです。自己流での練習だとコツがつかみにくくなりますし、間違った方法で練習してしまい変な癖がついてしまうリスクもあります。
グラトリ用の板の選び方はもちろん、グラトリのコツについてのご相談もお気軽に私たちインストラクターに聞いてみてくださいね。
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