ゲレンデを颯爽と滑り、スノーボード初心者やスキルアップを目指している人を教えているインストラクターに、憧れたことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか。
「スノーボードインストラクターになってみたいけど、誰でもなれるの?」
「資格は必要なの?」
「どんな人がスノーボードインストラクターに向いているの?」
など、いろいろな疑問が湧いてくると思います。
今回は、スノーボードインストラクターになるために必要な資格や、その資格を取るための方法、実際にスノーボードインストラクターになったときの1日の仕事の流れについて、現役のA級インストラクターが詳しく解説していきます。
また、スノーボードインストラクターに向いている人の特徴についてもお伝えしますので、自分の性格に合っているかチェックしてみてくださいね。
スノーボードインストラクターになるために必須の資格とは
スノーボードインストラクターはいきなり誰でもなれるわけではなく、資格が必要です。
その資格とは、JSBAのC級インストラクター以上の資格、もしくはSAJの準指導員以上の資格です。「以上」と書いているからにはこれよりも上の資格があるのですが、それについては後述します。
JSBA(日本スノーボード協会)とSAJ(全日本スキー連盟)というのは、スノーボードの資格を認定している団体の名前です。この記事では、スノーボードインストラクターの多くの方が加盟していて、公認校も多いJSBAについて解説していきます。
C級インストラクター or 準指導員の資格があればスノーボードインストラクターになれるよ!
C級インストラクターになるための手順
JSBAのC級インストラクターの資格を取るための手順についてお伝えしていきます。
JSBAに会員登録する
まずは、JSBAに会員登録する必要があります。JSBAの公式サイトからいつでも登録ができます。
入会金が1000円で、年会費が6000円です。(年度によって変動する可能性がありますので、公式ページでご確認ください。)
バッジテスト2級に合格する
JSBAの会員になったらバッジテストの2級にチャレンジすることができますので、事前講習を受けてバッジテスト2級合格を目指しましょう。
バッジテスト2級の試験内容
「カービングターンショート」「ベーシックカーブロング」「フリーライディング」の3種目です。
バッジテスト1級に合格する
バッジテスト2級に合格したら、次はバッジテスト1級に挑戦です。こちらも事前講習を受けて試験のポイントを確認してからテストに臨みましょう。
ちなみに「自分は滑りのスキルに自信があるから、2級を受けずに1級から挑戦する!」と考える方もいらっしゃるかもしれませんが、1級は2級合格の認定書がなければ受けることすらできません。
そのため、どんなに上手な方でも、まずは2級から順番に合格を目指していってください。
バッジテスト1級の試験内容
「ベーシックカーブショート」「ベーシックカーブロング」「フリーライディング」の3種目です。2級と変わってくるのはショートターンで、カービングターンだったのがベーシックカーブに変わります。
1級合格のためには特にショートターンを重点的に練習しておくといいでしょう。なお、バッジテストについては以下の記事でより詳しく解説していますので、よかったら参考にしてみてくださいね。
参考記事:スノーボードバッチテスト検定とは?受けるメリットとテスト内容
インストラクターになるための講習を受ける
晴れてバッジテスト1級に合格したら、インストラクターになるための講習を受けます。
講習会の日程や場所については毎年変わりますので、JSBAの公式ページを確認し、自分が受けるタイミングのときに都合のいい場所や日程を選びましょう。
講習会は2日間にわたって行われ、インストラクターとしてのレッスンの流れを学んだり、レッスンでぶつかるであろう壁についてみんなで話し合ったりというような内容です。
インストラクター講習会ではJSBAスノーボード教程(教本)が必要なので事前に購入しておきましょう。また、講習会の中で簡単なテストのようなものもあるので、できれば講習会の前に内容を確認し、目を通しておくと講習会での理解がスムーズになります。
講習会終了後、C級インストラクター認定を受ける
講習会を受け終えて、認定をもらえば晴れてC級インストラクターの誕生です。もうこの日からインストラクターですと胸を張って言うことができます。
ここまでがインストラクターになるための資格、C級インストラクター取得の流れです。滑走スキルとしてはC級インストラクター=バッジテスト1級なので、まずはバッジテスト1級に合格するレベルまで滑走スキルを上げることが必要になるでしょう。
インストラクターにはA級、B級もある
ここまでインストラクターになるための資格であるC級インストラクターについて話をしてきましたが、「C」ということは・・・当然AもBもあります。
インストラクターとして働くだけであればC級インストラクターを持っていれば十分なのですが、さらにステップアップを目指す方のためにA級、B級についてもお伝えしておきます。
B級インストラクターになるまでの流れ
STEP1:C級インストラクターの資格取得
バッジテスト1級を受けるために2級の合格が必要なのと同じように、B級を受けるためにはC級の資格を持っていなければなりません。
STEP2:学科試験に合格
B級からは筆記試験も入ってきます。内容はJSBAスノーボード教程から出ます。講習会で使ったあの教本ですね。けっこう細かいところまで出ますし、ひっかけ問題もありますので、しっかりと勉強してから臨みましょう。
STEP3:実技事前講習を受ける
JSBA公認スノーボード学校で4単位(8時間)の講習を受けます。この事前講習で、B級の実技試験の内容について詳しく教わることができます。
STEP4:実技検定を受ける
実技試験の際は実技事前講習を受けたことが分かる書類を提出します。
実技試験に合格すれば、B級インストラクターの資格をGETできます。
B級インストラクターの実技試験内容
B級インストラクターになるための実技検定は以下の6種目です。
・ベーシックカーブロング
・ベーシックカーブショート
・フォールスライドミドル
・ダイナミックカーブショート
・フリーライディング
・エア
1級までと違う種目は、フォールスライドミドル、ダイナミックカーブショート、エアの3つですね。ほかの3種目も、同じ種目とはいえ求められるレベルがかなり上がってきますので、しっかりと練習する必要があります。
なお、バッジテストのようなレッスンチェック式はなく、本番一発勝負のみです。受験者が順番に各種目1回ずつ滑走し、JSBAの公認検定員がその合否を判定していきます。
実施場所によっては2日間にわたって開催される場合もあります。
A級インストラクターになるまでの流れ
STEP1:B級インストラクターの資格取得
B級インストラクターの資格がなければA級の受験ができません。
STEP2:公認スノーボード学校で20単位以上の指導実務経験を積む
1単位2時間で40時間以上のレッスン経験が必要になります。過去3シーズンの合算なので、数年かけてA級まで目指す方も多いです。
STEP3:学科試験に合格
こちらはB級を受けるときにも経験している筆記試験です。B級のときより合格最低ラインが上がりますが、しっかりと勉強すれば問題なく受かるでしょう。
なお、学科試験の申込の時に指導実務証明書を提出します。
STEP4:実技検定を受ける
インストラクターの実技試験で最も難関な試験です。この実技試験に合格すれば、晴れてA級インストラクターになることができます。
A級インストラクターの試験内容
A級インストラクターの実技検定は以下の6種目です。
・ベーシックカーブロング
・ベーシックカーブショート
・ムーンスライドミドル
・ダイナミックカーブショート
・フリーライディング
・エア
A級インストラクターは、B級インストラクターの実技検定以上に質の高い滑走スキルが求められます。
また、B級が「フォールスライドミドル」であるのに対して、A級は「ムーンスライドミドル」になります。2つの違いをしっかりと理論から理解して臨むことが大切です。
A級、B級のイントラ試験の難易度
A級、B級の難易度はバッジテストの比ではないくらい、かなり難しいものとなっています。求められるレベルももちろんかなり高いですし、学科試験があったり、レッスン実務経験が必要だったりするので、インストラクターとして真剣に取り組む必要があるのです。
受験者の中には10年間、A級を受け続けている人もいるくらいで、合格するまで3年~5年かかるのは普通です。
ちょっと練習したくらいでは、あっけなく落とされてしまうため、みんなA級やB級を目指す人は人知れず必死に練習します。その必死の練習の中でメンタルがかなり鍛えられますので、人の痛みがわかるようになり、インストラクターに必要な「相手に親身になる」という人間性が鍛えられるのかもしれません。
スノーボードインストラクターの1日
ここまで、インストラクターになるための流れや手順についてお伝えしましたが、実際にインストラクターになったらどのような働き方をするのでしょうか。
この章では、冬のある日の1日の流れをご紹介していきます。
8:00 自分のウォーミングアップ
ウォーミングアップとして、ストレッチをしたり、軽く筋トレをしたりします。ウォーミングアップしつつ、スノーボードウエアにも着替えます。
スノーボードギアのメンテナンスをするときもあります。
9:00 雪上コンディション確認
リフトが動き出すくらいの時間に雪上に出て、実際にリフトに乗って滑り出します。
今日の雪質はどうなっているのか、初心者用のリフトの降り場がどういうコンディションなのか、ゲレンデ内で危ない箇所はないか、などを滑りながら確認します。
9:30 レッスン内容の最終確認
その日レッスンをする方の詳細や、レッスンをする内容などを最終確認し、レッスンの内容に合った板を準備します。(インストラクターは目的別に2.3本自分の板を持っていることが多いです)
9:45 お客様との待ち合わせ&午前のレッスン開始
お客様と待ち合わせをしていよいよ午前中のレッスン開始です。
関連記事:スノーボード初心者はレッスン受講がお勧め!レッスンのメリットとは
12:00 お昼ご飯
お客様の体力や集中力を見ながら、だいたい2時間くらいレッスンしたところで休憩をはさみます。
レストランの混み具合を見て、休憩に入る時間の調整をすることもあります。
13:00 午後のレッスン開始
だいたい1時間~1時間半くらい休憩したら午後のレッスン開始です。
関連記事:スノボ初心者が1人でレッスンを受けるのは実はメリットいっぱい!
15:00レッスン終了後レッスンの内容記録
レッスンが終わったら、その日どんな内容のレッスンをしたか記録します。
次回またレッスンをする際に前回のレッスン内容を把握しておくことで、より効率的な上達が期待できるのです。
15:30 自主練習
レッスンが終わり、一呼吸おいたら自主練習開始です。
お客様により質の高いレッスンを提供するため、自分自身のスキルアップも日々行わなければなりません。また、インストラクター同士で教え方の共有をすることで、レッスンスキルも向上させていきます。
17:00 帰宅
スノーボードが好きなので、ついつい練習しすぎてしまいますが、明日のレッスンに備えて体力温存も大切な仕事です。
帰って美味しいご飯をいただきます!
スノーボードインストラクターに向いている人の特徴
インストラクターに向いているのはどんな人なのでしょうか。私たちが今までいろいろなインストラクターの方々を見て、向いていると思われる人の特徴をまとめてみました。
スノーボードがとにかく好きな人
スノーボードが大好きな人は絶対的にインストラクターに向いています。
スノーボードが大好きなのがレッスン中も生徒さんに伝わりますので、レッスンがとても楽しそうに行われています。
好きなことを仕事にできるのって素敵ですよね。
人に何かを教えるのが好きな人
インストラクターは生徒さんにスノーボードを教える仕事なので、人に何かを教えるのが好きな人も向いています。
最初はまったくスノーボードができなかった生徒さんが、自分が必死になって教えることで「できた!!」と喜んでくれる瞬間があると、インストラクターをやっていてよかったなと心から思えます。
コミュニケーション能力に長けている人
インストラクターも接客業なので、高いコミュニケーション能力が必要とされます。スノーボードのレッスン代は決して安いものではありませんので、サービス精神に欠けた言葉使いや笑顔のない接客をしてしまうと、お客様を不快にさせてしまい、レッスンどころではなくなってしまいます。
最悪の場合クレームにつながりますので、コミュニケーション能力は必要不可欠と言えるでしょう。
マナーや常識がある人
インストラクターはスノーボードの技術を教えるのが仕事ですが、それだけではなくゲレンデでのマナーやスポーツマンとしての倫理観なども教えなければなりません。
そのため、マナーや常識などしっかりと人間性を兼ね備えていることも必要です。
体力がある人
インストラクターの仕事は体力勝負です。特に、複数人を教える際は一人ずつサポートしていきますので、一人を教えたら雪上をワンフットで登っていき、また滑り降りる、の繰り返しをしていきます。
真冬の雪上にもかかわらず、汗だくになることもしょっちゅうありますので、体力に自信がある方のほうが向いているでしょう。
向上心を保てる人
常に、「もっとわかりやすい教え方はないか?」「今日の自分の教え方はよかったのか」などと現状に満足せず、向上心を保てる人もインストラクターに向いています。
自分自身のスノーボードスキルだけでなく、人に教える際のレッスンスキルも常に磨いていけるような人が求められます。
責任感が強い人
「自分のレッスンを受けてくれた人は必ず上達させる!」
「来てくれたお客さんを絶対に楽しませる!」
「絶対にケガをさせない!」
という強い責任感を持ってレッスンできる人はインストラクターに向いています。
逆に
「今日の生徒さんはセンスがないから滑れるようにならなかった」
「運が悪かったからお客さんがクレームを入れてきた」
などと相手のせいや環境のせいにしてしまうような人は正直インストラクターに向いていません。
レッスンを受けて生徒さんが上達できないのは、すべて教えたインストラクターの責任です。仮にクレームを受けてしまったら運ではなく自分の接客が悪かったからです。
このように、責任転嫁せず自分の責任だと考えて反省できる人にぜひインストラクターになってもらいたいと思います。
おまけ|スノーボードインストラクターは夏の間どう過ごしている?
スノーボードは冬のスポーツですから、インストラクターの仕事は基本的に冬だけになります。中には、オフトレの人工芝ゲレンデでレッスンされているプロのインストラクターの方もいらっしゃいますが、ほとんどのインストラクターは冬だけの活動です。
では、夏、何してるの・・・・?
ということですが、夏と冬で仕事を分けているケースが多いです。
例えば雪が豊富な北海道や東北の地域では、農業、林業、漁業などの一次産業が盛んで、なおかつそれらの仕事は冬がオフシーズンです。
そのため、夏と冬で仕事を切り替えているインストラクターが多いのです。
私も夏の間は農家さんで収穫のお手伝いをしたり、ウェブデザイン制作でこのサイトのようなウェブサイトを作ったりして働いています!
まとめ
スノーボードのインストラクターになるためには、まずはバッジテスト1級に合格し、C級インストラクターになることが必要です。
向いている人の特徴についても触れましたが、一番はやはりスノーボードを楽しむ心を持ち続けることが大切だと言えます。
インストラクターになりたい方は、ぜひバッジテストからチャレンジしてみてください。もし、「なかなか1級に合格できない」「何から練習すればいいかわからない」という方は、ぜひお気軽に私たちに相談してみてくださいね。
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