バックカントリーは、人によって管理されていない手つかずの大自然の中を自由に滑ることができ、極上のパウダーラン体験ができることで、多くのスノーボーダーやスキーヤーを魅了しています。
一度バックカントリーを経験すれば、スキー場のコース幅とは比べものにならない壮大なスケールを滑り降りる気持ちよさに圧倒され、その虜になってしまうでしょう。
今回はそんなバックカントリーの魅力をたっぷりとお伝えしていきたいと思います。さらに、バックカントリー初心者が知っておきたいバックカントリーに必要なアイテムや危険性についても詳しくお伝えしていきます。
バックカントリー初心者だと、わからないことだらけで不安ですよね><
今回は、現役A級インストラクターの私たちがバックカントリーの魅力や危険性、基本的なアイテムなどについてポイントをまとめていきます!
バックカントリーとは?
そもそもバックカントリーって何?ということですが、バックカントリーは人によって管理されたゲレンデではなく、自然の山で滑ることを指します。ゲレンデではないので、もちろんリフトはありません。自力で登り、好きなところから滑り出します。
ゲレンデと大きく違う魅力はその自由度です。
ゲレンデとは違って、自然の中を自由に滑走することができます。危険の回避さえできていればどこを滑っても自由です。素晴らしい雪景色が広がっている中を、人混みを気にせず、自分だけのパウダーを満喫できるのでバックカントリーにハマる人が増えているのです。
ただ、危険も伴うため、バックカントリーを安全に楽しむためには、滑走スキルそのものが必要な上に、危険を回避するための知識と道具も必要となります。
バックカントリーの魅力とは
一度経験すれば病みつきになってしまうバックカントリーですが、どのような魅力があるのでしょうか。
冒険
バックカントリーの魅力といえば、冒険を楽しめるということではないでしょうか。
ゲレンデのように人によって管理されていないので、危険と隣り合わせではありますが、それが冒険心をかきたててくれるのです。
「ここは安全に登れるだろうか」
「ここを滑ってみたら気持ちよさそうだ」
「この先の景色はどうなっているんだろう」
普段は味わうことができないような自由さと、それに伴う冒険心が多くのファンを生み出しているといってもいいでしょう。
管理されていない非圧雪パウダー
圧雪車で綺麗にピステンをかけられたバーンも気持ちいいですが、手つかずの管理されていない自然の雪を滑るのがバックカントリーの大きな魅力です。
苦労して登り切った後に滑ることができる、驚くほど良質なパウダースノーは、一度滑った人なら忘れることができないでしょう。
「この一本のために苦労して登った甲斐があった!」と感じられるくらい、広大な大自然の中パウダースノーを滑り降りるのは快感です。
バックカントリーで一番人気なのはパウダースノーですが、時期や場所によってはザクザク雪やアイスバーンなど様々なバリエーションもあり、自然の中だからこそいろいろなコンディションを楽しめるというのも魅力の一つです。
自然が作り出した地形
管理されているスキー場と違い、自然の中の雪山は様々な地形をしています。まさに自然が作り出した天然のパークのようです。
ハーフパイプのようになっている沢地形が続いていたり、地形のデコボコでジャンプできたり、木に雪が乗ってマッシュルームのようになっているアイテムがあったり。
自然が作り出した地形を自分のアイディアと技術で遊びながら滑り降りることができるのもバックカントリーの魅力です。
雄大な大自然
どこまでも広がる雪景色。
自分で板を担いで登っていく最中も、耳をすませば鳥のさえずりが聞こえてきますし、木が風に揺られる音も聞こえてきます。人工的な音や雑音はなく、静けさに包まれた山の中で時間を過ごす・・・何という贅沢!
雪山の雄大な景色と、自分たちだけの静寂な時間。
都会では絶対に味わえないような雄大な大自然を、心行くまで味わうことができるのもバックカントリーの大きな魅力です。
登り切った後の達成感
バックカントリーでは、リフトがないため自力で上まで登らなければなりません。ふかふかのパウダースノーは滑る分には気持ちのいいものですが、登るとなるとスノーシューを履いていてもけっこうな大変さです。
登る山やその人のペースにもよりますが、2時間~3時間くらい登らなければなりません。
しかし、登り切った後は純粋に何とも言えない達成感があります。山頂から見える景色が絶景なのです。
まだ滑っていないにもかかわらず、もうすでに「楽しい」という感覚になります。
バックカントリーについてくるリスク
バックカントリーには多くの魅力があり、それが世界中のスノーボーダー、スキーヤーを虜にしています。私たちもその一人です。
しかし、一方でゲレンデと違い、大きな危険が伴うのがバックカントリーです。
管理されていないため、雪崩が起きたり、木や岩が出ていたりしますし、万が一トラブルが起きても自力でなんとかするしかありません。ゲレンデであれば電話一本でパトロールが駆けつけてくれますが、バックカントリーではパトロールの人がすぐに助けに来てくれる訳ではありません。
ここでは、バックカントリーで考えられるリスクについても確認していきましょう。
雪崩
バックカントリーの危険で一番先に思い浮かぶのが雪崩の危険性ではないでしょうか。
事実、バックカントリーにおいては雪崩への注意が一番重要です。雪崩に巻き込まれてしまうと窒息死してしまったり、雪崩に流されながら木や岩などに衝突して命を落としたりする可能性が高いのです。
また、自分が発生させた雪崩で他の人に被害を及ぼす可能性もあります。
雪崩が発生する原因は人によるものが多く、雪崩が起きやすい場所で安易に滑ってしまったり、一斉に全員で滑り出してしまったり、雪崩やすい場所を登ってしまったりなどが主な原因です。ただ、雪崩が起きやすいかどうかを100%判断できることは不可能なので、雪崩に関する知識や装備を備えておくことが重要になります。
雪崩の危険を回避するためには、ハイクアップする時のルートは安全か、休憩する場所は安全かなど常に自分がいる場所の安全性を考えることが大切です。
グループで行動している場合は、一斉に滑り出さず、必ず1人ずつ滑りましょう。そして、止まって他の仲間を待つときの場所は、フォールラインから外れている場所を選びます。仮に斜面で雪崩が発生しても自分がいる位置に雪崩がこないで止まって待つようにしてください。
また、他の仲間が降りてくるのを待っている間も滑っている人から目を離さず、万が一雪崩が起きて巻き込まれてもどこに埋まっているかわかるようにしておくことが大切です。
そして、雪崩に巻き込まれた場合に備えた道具も持ち歩いていることが最低条件です。
道迷い
雪山で怖いのが道迷いです。いわゆる遭難状態です。
真っ白な雪に覆われた雪山は、夏山と違って目印が特にありません。自由にどこでも滑れる魅力がある一方で、現在地がわからなくなり、遭難する危険もあるのです。
道迷いを防ぐには、事前にルートを頭に入れておくこと、行動中も地図やGPSで現在地を把握できるようにしておくこと、こまめに現在位置を割り出しておくことが大切です。
ツリーホール
ツリーホールとは、大量の降雪があった後に木のまわりにできる穴のことです。特にモミなどの常緑樹のまわりにはツリーホールができやすくなります。
バックカントリーでは、このツリーホールに落ちてしまう危険性もあります。ツリーホールに落ちてしまうと窒息の危険性が高くなりますし、頭から落ちてしまうとパニックになって余計に埋もれてしまう危険性もあります。
ツリーホールが怖いのは、一瞬にして落ちるため、神隠しのようにいなくなってしまうこと、そして、90%のケースで自力では出られないとのことです。
ツリーホールに落ちる事故を防ぐためには、一度に大量に雪が降った後はそもそもバックカントリーに行くことを検討することや、行くとしてもできる限り木に近寄らないことが大切です。
そして、絶対に一人ではバックカントリーに行かないことです。これはツリーホールの事故に限ったことではありませんが、グループでお互いの安全を気にしながら、お互いを確認しあえる距離を保つことが大事です。
万が一ツリーホールに落ちてしまった時などのために、すぐに吹ける位置に笛を身に着けておくことも重要です。
滑落
崖などで転落してしまったり、足元の雪面状況が悪く足を滑らせてしまったりして斜面下方に滑り落ちてしまったりすることを滑落と言いますが、バックカントリー経験者であれば一度はヒヤッとした思いをしたことがあるでしょう。
大きな崖に転落しないためには、事前に地図などで確認しておくことが大切ですし、視界が悪い場合や先が見えない場合は慎重に滑っていくことが重要です。
エッジが効かないようなツルツルの斜面を滑らなければならないケースでは、トゥエッジで滑り、ストックを刺しながら安全に斜面を降りるようにし、滑落を防止してください。
ハイクアップ中の滑落も油断できないので、少しでも危険を感じたらできるだけ早めにアイゼンを装着するようにしましょう。
木や岩に衝突
滑走中に転倒したり、雪崩に巻き込まれてしまったりした際に起こる可能性が高いのが木や岩への衝突です。そのため、バックカントリーではヘルメットが装着だと考えてください。
木や岩に衝突して流血していれば止血の対処をしなければなりませんし、骨折の疑いがあればその箇所を固定しなければなりません。
バックカントリーに行く際には、最低限の応急処置のスキルと知識を身に着け、応急処置できるキッドを持ち歩いておきましょう。
身動きができないほどのケガや意識が朦朧としている場合は無理せずヘリの救助を呼んでください。そのためにも山岳保険は必ず入っておくことが大切です。
ホワイトアウト
山の天気は急激に変わりやすく、一瞬のうちに霧や吹雪で周囲が白一色になって視界が悪くなることがあります。いわゆるホワイトアウトです。
ホワイトアウトになってしまうと、方向や斜度、凹凸がわからなくなるため、道迷いになるリスクが高くなります。位置が把握できていない状態で動き続ければ、遭難することもあります。
ホワイトアウトになりそうだと思ったら、すぐにGPSなどで現在位置を把握し、現在位置がわからない状態であれば、その場から動かず視界が良くなるのを待つという判断も大切です。
道具の不具合
ゴーグルが曇って見えなくなった、グローブが濡れて手が凍傷になった、バインディングが壊れてしまった、など道具のトラブルが起こる可能性もあります。
時期にもよりますが、バックカントリー中はかなりの極寒の中をハイクアップして滑り降りてきます。
そのため、寒さが原因でバインディングが壊れてしまうこともあるのです。
また、ハイクアップ中は暑くなり汗をかくこともありますが、立ち止まれば数秒で寒くなります。ハイクアップ中の熱気でゴーグルが曇ってしまうとそのまま水滴が凍り付いて斜面が見れなくなることも多々あります。
ハイクアップ中の汗でグローブの中が濡れてしまい、それが冷えて手が凍傷になってしまうというケースもあります。
このような道具のトラブルに備えて、バインディングの部品の予備や、予備のゴーグルレンズ、予備のグローブを持ち歩くとともに、ハイクアップ中はサングラスで滑るときにゴーグル、ハイクアップ中は薄手の手袋で滑るときに厚手のグローブ、などと使い分けることも大切です。
バックカントリーに必要なアイテム
バックカントリーを安全に楽しむためには、必要なアイテムをしっかりと装備して出かけることが重要です。アイテムがあるかないかで、快適にバックカントリーを楽しめるだけでなく、万が一の危険を回避したり脱却したりすることができます。
それでは必要なアイテムについてみていきましょう。
アバランチギア
・ビーコン
・プローブ
・ショベル
アバランチギアとは、雪崩が起きてしまった際に埋没者を捜索するための道具の事です。
ビーコンは電波を送受信することによって埋没してしまった人の位置を発見するためのギアです。捜索する側も、捜索される側も身につけておく必要があります。バックカントリーに出るのに一番重要ともいわれる必携アイテムです。
プローブはビーコンで埋没してしまったポイントを把握したあと、雪に差して埋没者の位置を特定するためのギアです。正確な埋没ポイントがわかったらショベルで雪を掘っていきます。
滑走と登行ギア
・スノーボード&バインディング&ブーツ
・スノーシュー
・バックパック
・ストック
スノーボードとバインディングとブーツは普通のゲレンデでも使っていると思いますので問題ないでしょう。ただ、バックカントリーではかなり深いパウダースノーの中を滑っていくことになりますので、パウダースノーに特化したパウダーボードのほうがお勧めです。
スノーシューとストックはハイクアップのときに必須です。ハイクアップのときはスノーボードの板をバックパックに着けて登っていきます。
アクセサリー
・グローブの予備
・ゴーグルの予備(予備レンズ)
・サングラス
・バラクラバの予備
・ヘルメット
バックカントリーではハイクアップで暑くなったり滑るときに寒くなったりしますので、汗をかいたときの予備のアイテムを装備しておくようにしましょう。
特にゴーグルは曇った時に予備がないとかなり厳しい状況になりますので、スペアのレンズとサングラスを持っておくことをお勧めします。
その他
・飲み物
・非常食
・時計
・スマホ(GPS)
・地図
ハイクアップ中にのどが渇くこともありますし、小腹が減ることもありますので、飲み物と非常食は持っておきましょう。手軽にエネルギーチャージできるチョコレートなどもお勧めです。
バックカントリー初心者がバックカントリーを楽しむために
バックカントリーの魅力は語りつくせないほどありますが、バックカントリー初心者がいきなり一人で山に向かうのは危険が多すぎます。
しっかりと下調べをし、危険性も理解し、必要なアイテムを揃えてからバックカントリーを楽しむようにしてください。必要なアイテムを最初からすべてそろえるのは大変だと思いますので、レンタルをうまく活用するのもいいですね。
バックカントリーの前にサイドカントリーで体験するのもアリ
バックカントリーというとかなりハードルが上がってしまいますので、まずはサイドカントリーでバックカントリー体験をしてみるのもいいですね。
サイドカントリーとは、スキー場の中の管理されていない斜面を滑ることです。管理されていない区域を滑るので自己責任であるという点はバックカントリーと同じですが、リフトを使ってアクセスできるので手軽にできますし、自分のスキルを見ながらすぐにスキー場エリアに戻ってくることも可能です。
管理されていないパウダーの中を滑るという体験ができるのは良い準備運動にもなるでしょう。
ただ、サイドカントリーも道を間違えるとかなり危険なので、サイドカントリーガイドを付けてプロに案内してもらって楽しむ方法がお勧めです。
私たちも、ルスツやキロロ、ニセコでサイドカントリーツアーをやっています!気になる方はぜひお問い合わせください!
バックカントリーに始めていくならガイドを付けるのがお勧め
サイドカントリーツアーを経験したら、次はいよいよバックカントリーですね。バックカントリーも始めていく場合は特にガイドを付けるのがお勧めです。
ガイドであれば雪崩やすいポイントも把握していますし、天候によっては引き返す判断もしてくれます。また、ギアの使い方の説明もしてもらえますので、万が一のときも安心です。
なお、バックカントリーはガイドをつけていても危険と隣り合わせというのは変わりありませんので、必ず山岳保険に入ってから参加するようにしてくださいね。
まとめ
バックカントリーは、ハイクアップから始まり、パウダースノーやツリーランなど、非日常を体験することができるまさに冒険です。大自然の中、自由を味わうことができ、冒険心を掻き立てられるのがバックカントリーの魅力です。
しかし一方で厳しい自然の危険性もありますので、十分な準備を整えることが重要です。
初心者だけでバックカントリーを行おうとはせず、最初はガイドを付けて安全に経験を積むようにしましょう。しっかりと準備して、安全を確保した上でバックカントリーを楽しんでくださいね!
もし、バックカントリーについて聞きたいこと、ガイドに質問したいことなどがあれば、お気軽にお問い合わせください。
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