スノーボードは、年齢や男女を問わず、だれでも楽しめるスポーツとしてとても人気で魅力的ですよね。もちろん、はじめからすぐに上手に滑れた!なんて人はほとんどおらず、みんな何回も転びながら上達していくものなので、最初はうまくいかなくても心配しないでくださいね。
ただ、特に初心者の方や、はじめてスノーボードを滑りに行く方に知っておいてほしいのが「逆エッジ」という恐怖の現象についてです(笑)
この逆エッジをいかに防ぎながら練習することができるかが、上達への近道のポイントとなりますし、ケガを防ぐコツです。
逆エッジが起こってしまう原因や逆エッジを回避する方法を知らずにスノーボードを練習しようとすると、何度もひどい転び方をしてしまい、痛い思いをすることになりますし、スノーボードが嫌いになってしまう恐れもあります。
そこで今回は、現役のA級インストラクターである私たちが、「逆エッジとは何か?」ということから、逆エッジになってしまう原因、逆エッジを防ぐための滑り方のコツについて詳しく解説していきたいと思います。
ぜひ、今回の記事の内容を参考にしていただいて、安全にスノーボードを楽しんでいってくださいね。
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そもそもスノーボードのエッジって何?
スノーボードを初めて滑る方は「エッジって何?」という方も多いと思いますので、逆エッジについてお伝えしていく前に、まずはスノーボードのエッジについてしっかりと理解しておきましょう。
エッジとは
エッジとは、スノーボードの板の周りについている鉄の刃のことでスノーボードを滑るときはこのエッジを使って滑っていきます。「エッジを使う」というのは、エッジの部分にしっかりと体重をかけてエッジを雪面に食い込ませるとイメージしておきましょう。
エッジが雪面にしっかりと食い込んでいれば、雪面をとらえることができるので転ばなくなるのです。逆に、雪面をエッジでとらえることができない状態になってしまうと転倒する確率が高くなってしまいます。
エッジの使い方の基本
エッジの使い方は、体重をエッジ部分にしっかりとかけて雪面をとらえることでしたね。
エッジにはかかと側のエッジとつま先側のエッジの2種類があり、状況によってどちらのエッジを使うかが変わってきます。
はじめのうちは斜面の下に体を向けて滑る練習をしていくので、かかと側のエッジをしっかりと使えるようになることが大切です。次のステップとして、ターンの練習をする段階になれば、かかと側のエッジとつま先側のエッジをうまく切り替えていくことが大切になります。
ただ、エッジの使い方の基本は、体の向きがどちらを向いていたとしても、常に山側のエッジを使うということです。体の向きがターンの切り替えで変わっていくと、かかとエッジかつま先エッジかどちらを使えばいいのかわからなくなるかもしれませんが、「常に山側のエッジ」と覚えておけば、混乱することもないので安心ですよ。
また、スピードを調整するときもエッジの使い方がポイントで、エッジの角度を調整して、雪との摩擦を大きくすることでスピードのコントロールをしていきます。
エッジの角度を調整してスピードをコントロールしていきますが、スピードアップの場合もスピードダウンの場合も、急激に角度を変えると衝撃が大きくなって転倒する可能性が高くなりますので、少しずつ角度を変えてスピードコントロールをしていきましょう。
車や自転車も、急にブレーキをかけたり、急にアクセルをベタ踏みしたりしたら、大きな衝撃が来てしまいますよね。スノーボードも同じで、急激にスピードを上げたり下げたりすると危険ですので、徐々にコントロールしていくイメージを持ちましょう。
逆エッジって何?どういう状態?
エッジとは何か?ということや、エッジの使い方についてお伝えしたところで、いよいよ逆エッジについてみていきましょう。
逆エッジとは、言葉で簡単に説明すると、本来使うべき側のエッジとは反対側のエッジを使ってしまう(体重をかけてしまう)ことによってバランスを崩し、激しく転倒してしまうことを言います。
逆エッジが怖いのは、エッジが「引っかかる」ような感覚で大きく飛んで転倒するため、転倒の仕方や打ち場所が悪いと骨折などの大けがにつながってしまうところです。
スノーボードの場合、両足が板に固定されているため、転ぶ時に足を出すことができないので、雪面から遠い頭や上半身などを激しく打ってしまいやすくなり、とても危険なのです。
ちなみに、逆エッジには前向き逆エッジと後ろ向き逆エッジがありますので、それぞれ特徴も見ていきましょう。
前向き逆エッジ
前向き逆エッジは、本来、かかと側のエッジを使うべきところで、誤ってつま先側のエッジに体重をかけてしまうことによって起こる現象です。
体が斜面の谷側を向いているときに起こります。
かかと側のエッジを使って滑っているつもりだったのに、誤ってつま先エッジに乗ってしまい、前側に転倒してしまいます。前に転ぶので、受け身は取りやすくはありますが、それでもスピードが出ていれば空中で回転してしまうほど飛ばされることもありますし、最初に受け身で出るのが手なので、手首を強く痛めてしまう恐れもあります。
後ろ向き逆エッジ
後ろ向き逆エッジは、本来つま先側のエッジを使うべきところで、誤ってかかと側のエッジに乗ってしまうことで起こります。
体が斜面に対して山側を向いているときに起こるので、転倒する方向が後ろ向きになってしまい、ケガの危険性が高い転び方になってしまいます。
前向きの逆エッジと違い、受け身が取りにくいので、後頭部を強く雪面に打ち付けてしまったり、首を痛めてしまったりとケガの程度が重くなりやすい危険な転び方なのです。
特に、ターンの練習をし始めたばかりの初心者のころに、右側にカーブする練習中、後ろ向き逆エッジを経験しやすいでしょう。
後ろ向き逆エッジを何度も経験してしまうと、どうしても強い恐怖心が生まれやすくなってしまいます。できれば最初の練習の段階ではプロのインストラクターにしっかりと指導してもらったほうが安全でおすすめですよ。
逆エッジが起こりやすいシチュエーション
初心者のうちは板の扱いやエッジの使い方に慣れていないので逆エッジになってしまう回数もどうしても多くなります。
特に逆エッジが起こりやすいシチュエーションをお伝えしておきますので、このようなシチュエーションになるときは、いつも以上にエッジの使い方を意識すると逆エッジを防止することにつながるでしょう。
初心者がターンの練習をしているとき
木の葉滑りができるようになってきたら、次のステップアップはターンの練習になります。
ターンができるようになるとスノーボードの本当の楽しさがわかってくるのでぜひチャレンジしていただきたいのですが、初心者のころはターンの練習中に逆エッジになってしまうことが多いです。
ターンは、かかとエッジからつま先エッジへの切り替えと、つま先エッジからかかとエッジへの切り替えの連続で成り立っているので、切り替えのときにうまく体重移動ができないと間違ったほうのエッジに体重がかかり、逆エッジが起こってしまうのです。
参考記事:木の葉滑り卒業!スノボ初心者がターンをマスターするための4ステップ
緩やかな斜面を滑っているとき
初心者のうちは、急な斜面よりも緩やかな斜面のほうが精神的に楽ですし、簡単に滑れそうな気がしてしまうと思いますが、逆エッジのリスクを考えると緩やかな斜面のほうが危険度が高いです。
以下の図を見ていただければわかるかと思いますが、急斜面だと、よほどのことがなければ谷側のエッジに体重をかけることはないので、逆エッジになりにくいです。一方、緩斜面だと谷側のエッジが雪面に近くなるので、ふとした拍子に谷側のエッジに体重をかけてしまい、前側の逆エッジが起こりやすくなるのです。
また、精神的に緩やかな斜面のほうがホッとしやすいのか、エッジへの注意や意識が薄れてしまうことも逆エッジが起こりやすい理由です。
止まろうと板を横にしたとき
スノーボードでスピードを緩めて止まろうとするときは、板を横にして雪との摩擦を大きくしていく必要がありますが、板を横にする分、反対側のエッジがひっかかってしまう面積も増えるので逆エッジが起こってしまうことがあります。
特に、緩やかな斜面で停止しようとするときは要注意です。
また、スピードが出ているところから急に板を横にして急ブレーキをかける形になると、慣性の法則が働いて体だけ前に吹き飛ばされてしまうこともありますので、スピードコントロールは徐々に行うことを意識しましょう。
慣性の法則は、身近な例でいうと電車が急停車したときに、体が前に動いてしまう現象がわかりやすいでしょう。スノーボードの急停止も同じで、板だけ停止しても体は動き続けようとするので体が前に倒れてしまうのです。
グラトリの練習をしているとき
逆エッジはエッジの使い方に慣れていない初心者のころによく起こる現象とお伝えしていますが、上級者になってからも逆エッジと完全にさよならすることはないかもしれません。
特に、グラトリの新しい技の練習をしているときは逆エッジのオンパレードになります。
グラトリでは、スノーボードの板を回転させる技も多く、板が予定の角度まで回せなかったときに盛大に逆エッジを食らうことになります。
僕もグラトリで新しい技に挑戦するときは逆エッジ覚悟で練習しています。逆エッジ無くしてスノーボードのかっこよさは手に入らないのかもしれません(´;ω;`)
関連記事:グラトリ初心者必見|グラトリをマスターしてスノーボードをもっと楽しもう
逆エッジにならないような滑り方のコツ
逆エッジがいかに痛いものか、一度でも経験したことがある方ならよくおわかりだと思います。
好き好んで逆エッジになりたい人はいないと思いますが、なかなか完全に逆エッジを防ぐのは難しいですよね。
そこでこの章では、逆エッジを起こしにくい滑り方のコツをお伝えしていきます。
膝を適度に曲げる
1つ目のコツは、膝を軽く曲げて滑るということです。膝を曲げることによってかかとならかかと、つま先ならつま先にしっかりと体重をかけることができるので、本来のエッジにしっかりと体重がかかり、逆エッジになりにくくなります。
ただ、「膝を曲げよう!」と意識しすぎると、膝ではなく腰が曲がり、お尻が出た体勢になる方が多いので、「軽く」曲げるというイメージで滑ってみてください。
膝を曲げるのは◎ですが、腰が曲がってお尻が出てしまうと反対に逆エッジになりやすい体勢になってしまいます。また、怖いからと言って頭を下げてしまうのも逆エッジが起きやすい体勢になりますので、頭も上げておくことを意識してください。
体重をかけるべきエッジを意識する
逆エッジは、本来体重をかけるべきエッジと反対側のエッジに体重をかけてしまったときに起こる現象です。
そのため、慣れるまではどちらのエッジに体重をかけるべきかを意識しながら滑ると逆エッジを防ぐことができます。体重をかけるべきなのは、常に山側のエッジでしたね。
急斜面では、普通に滑っていればほとんど逆エッジは起こらないので、緩斜面を滑るときに「今はどちらのエッジを使うべきか」を意識して滑ってみるとエッジの使い方に慣れていくでしょう。
つま先ターンの練習は頭を上げて胸を張る
人間は恐怖心を持った時、頭を下に下げがちです。体を小さくして衝撃に備える体勢を取ろうとしているのだと思いますが、ことスノーボードに関しては、頭を下に下げると余計に危険です。
特に、つま先側のエッジを使ってターンをするとき、どうしても恐怖心から頭を下げてしまいやすいのですが、頭が下がると腰が曲がり、しっかりとエッジに体重がかけられない体勢になって逆エッジを引き起こしてしまいます。
そのため、つま先ターンを練習するときは頭を上げて胸を張ることを意識しましょう。
つま先ターンのときに頭を上げろと言われても、怖いとどうしても頭を下げてしまいますよね。恐怖心で練習がうまくいかないときは、インストラクターのサポートを受けながら練習するのが上達の近道です。サポートがあれば安心して頭を上げてターンできるようになるのでコツをすぐに掴めるはずですよ。
逆エッジでケガをしないために大切なこと
上の章で逆エッジを防ぐための滑り方のコツをお伝えしましたが、どれだけ意識していても逆エッジになることはあります。
初心者の方は特に逆エッジになりやすいですが、上級者になっても逆エッジを100%防ぐことはできないでしょう。
大切なのは、もし逆エッジになってしまったとしても、ケガをしないようにすることです。では、ケガをしないためにどのようなことをすればいいのでしょう。
準備運動で体を伸ばしておく
スノーボードを滑り出す前に必ず準備運動をしましょう。このとき、なんとなく準備運動をやるのではなく、体のどの部分が伸びているかを意識しながらやるとより効果的です。
特に、逆エッジでケガをしやすい首元や手首などはしっかりとストレッチしておくといいですね。
ヘルメットやサポーターを付ける
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派手に逆エッジになってしまったときに備えて、ヘルメットやサポーターなどの装備もしておきましょう。
ヘルメットは大切な頭を守るための装備なので、特に重要です。
サポーターは上半身全体につけるプロテクターや手首につけるリストプロテクター、脛を守るニープロテクターなどいろいろと種類があります。すべてつけると滑りにくくなってしまうことも考えられますので、心配な部分を重視して選ぶといいでしょう。
参考記事:スノーボードにヘルメットは必要?ヘルメットの利点や選び方ポイント
転び方を練習する
逆エッジでのケガを防ぐためには、上手な転び方をマスターしておくことも重要です。上級者になればなるほど、逆エッジによるケガをしにくくなるのは、逆エッジの回数が減るということもありますが、転び方がうまくなるからだとも言えます。
安全な転び方については、こちらの【スノーボードで多いケガとケガを防止するための効果的な予防策】の記事でもご紹介していますので、こちらも参考にしながらスノーボードを滑り出す前に転び方の練習もしてみてくださいね。
逆エッジにならない魔法の板ってあるの?
もし、逆エッジにならない板が存在するのであれば、そんな板でスノーボードを滑りたいと思ってしまいますよね。
残念ながら、100%逆エッジを回避することができる板というものは存在しませんが、逆エッジを極限まで回避できる板はあります。それは、ロッカー形状のスノーボードです。ロッカー形状の板はキャンバー形状の板よりも逆エッジになりにくい作りになっています。
ロッカー形状の板は、もともとグラトリに向いている板として作られているので、エッジの抜けがとても良く作られています。そのため、エッジがかかりにくく逆エッジにもなりにくいのです。
ただ、個人的には初心者の方がロッカー形状の板を選ぶのはあまりおすすめしません。
なぜなら、スノーボードの上達を目指していくと、最終的にはキャンバー形状の板を選ぶようになっていくからです。
初心者のうちにロッカー形状の板で滑って慣れてしまうと、キャンバー形状の板に乗り換えたときに乗り味が違って違和感を覚えてしまいますし、ターンの練習をするときにもエッジがかからないのでうまくターンできずに上達スピードが遅くなってしまいます。
もし、どうしても逆エッジをできるだけ回避したいという方は、ハイブリッドキャンバーといって、キャンバーとロッカーのメリットを組み合わせたタイプの板を選ぶことをおすすめします。
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まとめ
今回は、すべてのスノーボーダーが恐れていると言っても過言ではない、逆エッジについてお伝えしてきました。
逆エッジを防ぐための滑り方のコツや逆エッジでケガをしないためのポイントをお伝えしてきましたが、参考になりましたでしょうか?
残念ながら、逆エッジを完全に防ぐことはできませんが、少しでもケガのリスクを減らして安全にスノーボードを楽しんでいただけたらと思います。
なお、こちらのサイトでは、スノーボードをより楽しく滑るための練習方法や、スノーボードアイテムについての豆知識などについて幅広くお伝えしております。
もし、スノーボードに関してわからないことや、相談したいことがあれば、ぜひお気軽に私たち現役のインストラクターにお尋ねくださいね。
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